「使役構文のニュアンスの違いは何ですか?」ー日本語では同じ「~させる」という訳になる使役構文ですが、状況によって使うべき動詞は異なります。ここでは「彼にパソコンの確認をさせた」という例文を元に make, have, get, let のニュアンスの違いを解説します。
それぞれの使役動詞のコアイメージ
makeのコアイメージ
makeのコアイメージは「こねて、形づくって、固定する」です。
makeの目的語(こねられるほう)から見ると「強制的に」というニュアンスが出てきます。
haveのコアイメージ
haveのコアイメージは「もっている」です。
haveは何かを直接持っている場合だけでなく、主語が関係している場の上にある(支配下にある)場合も使われます。
getのコアイメージ
getのコアイメージは「何かのアクションによって自分のものにする」です。
getは結果だけでなく、そこに至るまでの過程も含む表現です。
letのコアイメージ
letのコアイメージは「そのままに任せる」です。
新たな力を加えたりせずそのまま自由にさせたり、何かをしたがっているなら許可してさせてあげたりするのが let です。
使役構文のニュアンスの違いを例文で確認
make+人+動詞の原形
例文:I made him check my computer.((強制的に)彼にパソコンの確認をさせた)
makeを使った使役構文は「人に命令して何かをやらせる」ことであり、言われたほうは断ることができません。
例文に出てくる人間関係としては、たとえば、He(彼)はI(私)の夫であるような場合が考えられます。
妻 | パソコン壊れちゃったんだけど… |
夫 | (ゲームをしながら)えー!? |
妻 | いますぐ見てくれない?もちろん嫌だなんて言わないわよね。 |
夫 | やれやれ、ホントに人使いが荒いなぁ。(どうせ再起動したら直るパターンだろうに…) |
have+人+動詞の原形
例文:I had him check my computer.((当然やるべきこととして)彼にパソコンの確認をしてもらった)
haveを使った使役構文は「確認を行うことが当然と見なされる」ような場合に使われます。
たとえば、職務上当然とされるような業務依頼などで、He(彼)はI(私)の秘書であるような場合が考えられます。
このようにhaveはお金に対する対価として何かをやってもらうときによく使われます。
例文:I had him cut my hair.(彼に髪を切ってもらった)
あるいは、haveは好意(無償)でやってもらうときにも使われます。
たとえば、パソコンに詳しい友だちが好意で確認してくれるようなパターンです。
いずれにせよ、makeほどではありませんが、haveは依頼する側が少しだけ力をもっている感じがあります。
これはhaveのコアイメージで述べた「主語の支配下にある」ことに由来しています。
このような力関係を抜きにして中立的に述べたい場合は、”He checked my computer for me.” と表現します。
get+人+to 不定詞
例文:I got him to check my computer.((説得などの結果)彼にパソコンの確認をしてもらった)
getはhaveとほとんど同じニュアンスで使われます。
つまり、この例文も職務上当然とされるような業務依頼のイメージです。
ただし、getには説得などの働きかけをした結果として、確認してもらえるようになったニュアンスが含まれます。getに含まれる「過程」が反映されるわけです。
またgetはhaveに比べて動きを含んでいる分だけ、話し言葉で使われやすいのが特徴です。
let+人+動詞の原形
例文:I let him check my computer.((確認したがっている)彼にパソコンの確認をさせてあげた)
He(彼)は何らかの理由で私のパソコンの確認をしたがっています。そこへ私が許可を出して(制限を外して)、彼に確認させてあげるイメージになります。
イラストでは「同じモデルのパソコンの購入を検討している彼にletで許可を出す」パターンを題材に挙げましたが、それ以外に「業務上メンテナンスする必要があり、パソコンに触る許可を求めている彼にletで許可を出す」というパターンもあり得ます。
「使役構文のニュアンスの違い」まとめ
使役構文 | 使役構文の意味 | 使役動詞のコアイメージ | ニュアンスの違い |
---|---|---|---|
make+人+動詞の原形 | (強制的に)人に~させる | こねて、形づくって、固定する | 命令・強制 |
have+人+動詞の原形 | (当然のこととして)人に~してもらう | もっている、主語の支配下にある | 当然・対価 |
get+人+to 不定詞 | (働きかけの結果)人に~してもらう | 何かのアクションによって自分のものにする | 当然・対価・過程を含む |
let+人+動詞の原形 | (やりたがっている)人に~させてあげる | そのままに任せる | やりたがっている人への許可 |
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コメント
外国人が普通に話す使役構文は、日本人には難しく感じます。その理由として、どの単語を使っても「~させる」で訳され、本来のコアなイメージが頭に浮かばないからだと思います。この記事でmakeとletは理解できましたが、haveとgetはぼんやりした感じでした。しかし、例文とその説明は大変参考になりました。
それぞれの使役動詞が持つニュアンスの違いが理解できました。個人的には、「get」には結果に至るまでの過程が含まれている、また、動きを含んでいるため「have」に比べて話し言葉で使われやすいという部分が興味深く、勉強になりました。ほかの文章でも「get」の持つこういった意味合いを意識的に捉えるようにしたいと思いました。
make, have, getの使役表現の違いは分かりやすかったが、letの例文の訳で、((確認したがっている)彼にパソコンの確認をさせてあげた)とあったが、「許可」という部分を入れたほうが、letのニュアンスがより出て分かりやすいのではないかと思った。
「使役構文におけるmake, have, get, letの違い」は頭が混乱する部分ですよね。とてもわかりやすく説明されていると思いました。コアイメージのイラストは、いいですね。さらに、状況設定があったので、よりわかりやすかったように思います。
使役動詞4つを同時に比較できたので、それぞれの違いがクリアになりました。特にgetやhaveのコアーメージはよく知らなかったので勉強になりました。なるほど、こういうイメージでネイティブは使い分けているんですね~。
始めは理解できない難しい内容だと思っていましたが、記事を読むと、イメージすることができたため、理解ができるようになりました。なるほどと納得できる分かり易い記事だと思います。
本題とは別の、右側にある「最新の記事」がちょっと大きく目立つので目障りのような気もします。それに、文字が重なっていて、とても見づらいので改善してほしいと感じました。
make, have, get, letはいままでははっきりと理解できていなかったのですが、今回のコアイメージを見ることで、ある程度理解できるようになりました。
初めて拝見させていただいたのですが、とても分かりやすいです!
一つの疑問で、”Let me know” という口語でよく使うと思うのですがなぜそのようになるのですか?
ご質問の “Let me know.” ですが、こちらは「教えてください」という意味でよく使われる表現ですね。命令文なので (You) let me know. と you が省略されているわけですが、「知りたがっている私に対して、あなたが許可を出して知らせてあげてください」という感じになります。つまり、裁量権をもっているあなたに対して「許可」を求めているニュアンスであり、間接的に「教えてください」とお願いしているわけですね。
比較:Could you tell me the way to the station?(その駅までの道を教えて頂けますか?)
tell me も「教えてください」とお願いする表現ですが、こちらは直接的に「教えて」とお願いしています。そのままだとストレート過ぎるので、Could you のような過去形を使って遠回しにするのが一般的です。
ただ、それでも、(you) tell me と (you) let me know を比較すると、教える行為をリクエストしている tell me のほうがストレートな表現ということになります。
使役構文、改めて良くわかりました。しばしば先生のサイトで勉強させていただいております。が、しみじみ良く練られた解説をして下さっていることに感動しました。イラストもわかりやすくって愛嬌があってとってもいいです。ありがとうございました。
コメントならびにお褒めの言葉ありがとうございます!引き続きお役に立てるように頑張ります。