前置詞 on は「~の上に」という意味が有名ですが、on fire(火事になっている)や on the radio(ラジオで)のように「~の上に」では捉えられない用法もあります。この記事では on のコアイメージから、on の持つ意味・用法を解説します。
on のコアイメージ
on のコアイメージは「~に触れている」です。
イラストにあるように「平面にピタッとくっつけて、じーっと触れたままにする」ようなイメージです。on は「~の上に」という意味が有名ですが、ポイントは「触れている」であることに注意してください。
on の主な意味
英語 | 意味 | 例文・フレーズ |
---|---|---|
on | [接触を表して]~に、~の上に | on the wall(その壁に) on a piece of paper(紙面上に) |
~の途中 | on one’s way home(帰り道の途中) | |
~している | on fire(燃えている) | |
~に関する | on history(歴史に関する) | |
[手段・媒体]~で | on diesel(ディーゼルで) | |
[日付・曜日]~に | on Tuesday(火曜日に) |
on は幅広い意味で使われており、中にはコアイメージの「触れている」から連想しにくいような意味もありますよね。そこで、on のコアイメージからどう発想すれば、そのような意味が出てくるのか、その手がかりとして用法イメージを用いて解説していきます。
これらの用法「A の表面にくっついている」「A に影響を及ぼす」「A をしている状態」「(手段・媒体としての)A で」「A を地面にくっつけている」「(テーマとしての)A に関して」について、例文で確認していきましょう。
on の用法
「表面上にある」を表す on
コアイメージの「触れている」イメージから、「何かの表面上にある」ことを表す用法が派生しています。
表面にくっついている
例文:The picture is hanging on the wall.(その絵は壁にかかっています)
on the wall は「その壁に」という意味。on は壁という表面に絵がくっついていることを表しています。
例文:There’s a fly on the ceiling.(天井にハエがいる)
on the ceiling は「その天井に」という意味。on は天井という表面にハエがくっついていることを表しています。
紙面上にある
例文:He wrote his phone number on a piece of paper.(彼は紙に彼の電話番号を書いた)
on a piece of paper は「紙の上に」という意味。on は電話番号が紙面上にあることを表しています。
相対的な位置にある
例文:You will see the school on your left.(左側に学校が見えるでしょう)
on your left は「あなたの左側に」という意味。on は複数ある平面の中から、ひとつの平面を選ぶときにも使われます。
学校が見えるのは「右側」と「左側」に分かれている平面のうち左側の平面だ、というわけです。
顕在化している
例文:He has a lot of things on his mind.(彼には気がかりなことがたくさんある)
on one’s mind は「気にかかって」という意味。on は表面上にあるイメージから「物事が顕在化している」ことを表すときにも使われます。
たくさんのことが彼の心の上に顕在化している、つまり悩みの種がたくさんあるというわけです。
比較:He always has a lot of ideas in his mind.(彼はいつもたくさんのアイディアを心の中に秘めている)
in one’s mind は「心の中に」という意味。in は何かの中にあることから「物事が潜在化していて、表に出てきていない」ことを表しています。
「表面に向かう動き」を表す on
コアイメージの「触れる」イメージから、「何かの表面に向かう動き」「何かに影響を及ぼす」用法が派生しています。
表面に向かう動き
例文:He kissed her on the cheek.(彼は彼女のほっぺたにキスをした)
kiss ~ on the cheek は「~のほっぺたにキスをする」という意味。on はキスの動きをほっぺたの表面に向ける働きをしています。
影響を及ぼす
例文:There will be new restrictions on the sale of weapons.(武器の販売に対して新しい規制があるだろう)
restriction on ~ は「~に対する規制」という意味。on は「武器の販売」という面に向かう動きを表しており、「新しい規制」が「武器の販売」に影響を及ぼすことを意味しています。
乗り物に乗る
例文:She got on the train.(彼女は電車に乗った)
get on the train は「電車に乗る」という意味。on は get の動きを電車の床面に向ける働きをしています。
比較:She got in the taxi.(彼女はタクシーに乗った)
get in the taxi は「タクシーに乗る」という意味。in は get の動きをタクシーの中に向ける働きをしています。
かがんで乗るような場合は in、床面への移動で乗るような場合は on だと考えると良いでしょう。
「ライン上にある」を表す on
コアイメージの「くっつけて、触れている」イメージから、「一時的に何かの上にいる(ライン上にある)」「何かをしている途中である」を表す用法が派生しています。
ルート上にいる
例文:He was on his way home.(彼は家に帰っている途中でした)
on one’s way home は「帰り道の途中」という意味。on は 帰り道の上にいることを表しています。
進行中の状態を表す
例文:The house is on fire!(その家が火事だ!)
on fire は「火事になって、火がついて」という意味。on は火事が進行している状態を表しています。
この on はスイッチのイメージで捉えるとよいでしょう。
スイッチがオンの状態とは、回路がつながって「何かが起きている状態」のことです。このイメージから、進行中の状態を表す用法が出てきたわけです。
逆にスイッチがオフの状態とは、回路がつながっておらず「何も起きていない状態」のことです。このように on は off と対比させながら考えるとわかりやすいですね。
「手段・媒体」を表す on
さきほどの用法「進行中の状態を表す」は、何かをきっかけに動作が始まるイメージでした。この動作部分をもう少し複雑な「仕組み」とみなして、そのような仕組みを動かす・仕組みが働くイメージから「手段・媒体」を表す用法が派生します。
燃料・機関を表す
例文:Most buses run on diesel.(ほとんどのバスはディーゼルで動いている)
on diesel は「ディーゼル(軽油)で」という意味。
さきほどのスイッチのところがディーゼルになっているイメージで捉えるとよいでしょう。on は仕組みを動かすための燃料を表しています。
手段・媒体を表す
例文:I heard it on the radio.(私はそれをラジオで聞いた)
on the radio は「ラジオで」という意味。
ラジオ電波を受信して、ラジオ端末から音声出力するという仕組みが働いているイメージで捉えるとよいでしょう。on はそのような仕組みを利用しているということで手段・媒体を表しています。
「地面との接触」を表す on
on は「~に触れている」が基本のイメージですが、地球には重力があるため、触れていると言っても地面に触れているパターンが多くなります。そのため、on だけで「~を地面にくっつけて」という意味も表すようになりました。
例文:Can you stand on your head?(逆立ちはできますか?)
on your head は「あなたの頭を地面にくっつけて」という意味です。
例文:He was on his hands and knees searching for something.(彼は四つんばいで探し物をしていた)
on his hands and knees は「彼の手と膝を地面にくっつけて」つまり「四つんばいで」という意味になります。
「テーマ」を表す on
on は何かの表面にあるイメージから、何かを表面化して浮かび上がらせるイメージに派生します。このような on は学問的・専門的なテーマを表すときによく使われます。
例文:The teacher gave us a talk on history.(その先生は私たちに歴史のお話をしてくださった)
on history は「歴史に関して」という意味。
on は「歴史」を表面化して浮かび上がらせるイメージで、テーマを表しています。
「時に関する表現」の on
特定の日を表す
例文:They will be there on Tuesday.(彼らは火曜日にそこにいるだろう)
on Tuesday は「火曜日に」という意味。日付や曜日を固まりのイメージで捉えるとよいでしょう。
~に接して(~と同時に)
例文:On getting home, I phoned Mike.(家に帰ってすぐに太郎に電話した)
on getting home は「家に帰ってすぐに」という意味。
on の回路が「帰宅」によってカチッとはまり、それをきっかけに何かが作動し始めるイメージで捉えるとよいでしょう。
まとめ
on のコアイメージは「~に触れている」です。
on の主な用法は「A の表面にくっついている」「A に影響を及ぼす」「A をしている状態」「(手段・媒体としての)A で」「A を地面にくっつけている」「(テーマとしての)A に関して」です。
カテゴリ | 用法 | フレーズ | 意味 | 備考 |
---|---|---|---|---|
表面上にある | 表面にくっついている | on the wall | その壁に | |
相対的な位置にある | on your left | あなたの左側に | 複数ある平面からひとつ選ぶ | |
顕在化している | on his mind | 気にかかって | 彼の心の上に顕在化している | |
表面に向かう動き | 表面に向かう動き | kiss ~ on the cheek | ~のほっぺたにキスをする | |
影響を及ぼす | restrictions on the sale of weapons | 武器の販売に対する規制 | ||
乗り物に乗る | get on the train | 電車に乗る | get の動きを電車の床に向ける | |
ライン上にある | ルート上にいる | on his way home | 帰り道の途中 | |
進行中の状態を表す | on fire | 火事になって | 回路がつながっているイメージ | |
手段・媒体 | 燃料・機関 | on diesel | ディーゼルで | 燃料がスイッチのイメージ |
手段・媒体 | on the radio | ラジオで | 仕組みを利用しているイメージ | |
地面との接触 | 地面との接触 | on your head | 頭を地面にくっつけて | |
テーマ | テーマ | on history | 歴史に関して | 学問的・専門的なテーマ |
時に関する表現 | 特定の日を表す | on Tuesday | 火曜日に | |
~に接して(~と同時に) | on getting home | 家に帰ってすぐに | 回路がはまり、それをきっかけに作動し始めるイメージ |
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コメント
onの使い方がシーンごとにまとめられていて、とても分かり易かったです。最初のフレーズは難しく、私にも理解できる内容なのかなとびっくりしましたが、内容はとても良かったです。今までonは~の上にとすぐに訳していたのですが、これからは、触れていると考えれば、理解が深まることを勉強できました。
“on”のコアイメージである「~に触れている」は学生時代に学んだので覚えています。しかし、その他の例題の”on”はイディオム感覚で勉強したため、覚えているものもあれば、そうでないものもありました。復習できてよかったです。特に、「電車に乗る」と「タクシーに乗る」の違いに気づけて良かったです。
onには~の上にあるという意味以外にもいろいろな意味で使われているんだなと思いました。ちょっと難しかったですが例文による解説でよくわかりました。onとinの使い分けもとても参考になりました。これでonをうまく使いこなせそうです。
私の中で、onは前置詞の中でも理解が難しい物の1つだったので、復習も兼ね非常に為になりました。コアイメージが~に触れているという事を念頭に置くと、その状況をイメージしやすくなり様々な使い方がすっきり頭に入ってきました。あと、in the taxiとon the trainの使い分けが、かがむかそのままかという説明はとてもわかりやすかったです。
物事が潜在化していて、表に出てきていないことの部分で、on his mindと in his mindが微妙にちがうということがわかりやすかったと思います。中学校でもこのサイトのようなイメージで伝えてくれればもっと成績は良くなったはずと思いました。
onのイメージは、基本的にはわかりやすいです。特に、on the trainと in the taxiの違いはわかりやすく、スッキリしました。ただ、質問者さんの質問にもある「on the radio」の説明がいまいち納得出来ません。理屈としては、分かる気もするのですが、私には少し難しく感じられました。
割と何となくで使えてしまうがゆえに、まじで何も考えずに使ってきた前置詞onですが、「~に触れている」というコアイメージおよびそれからの派生というのを改めて把握する事で、漫然と何となく、からは脱却できそうです。
前置詞onと言えば「~の上に」ですべて対応できると思いがちですが、簡単には処理できないことが例文解説を通じて理解できる記事だと感じました。また、got on the trainとgot in the taxiでのonとinの違いについての解説ですが、英語を母語とする人の発想が出ていて興味深く読みました。
様々な用法で使われている前置詞のonですが、そのコアなイメージが「~に触れている」状態を表すということを理解しておくと、各用法が理解しやすくなると思いました。それぞれの例文やまとめがわかりやすかったです。
前置詞 on については「~の上に」と瞬間的に思いますが、「~に触れている状態」というコアイメージで考えれば確かに合点がいきますね。他にもいろいろな用法が紹介されていますが、覚えてしまえばさほど悩むことはないように思いました。