前置詞 in は「~の中」という意味が有名ですが、in pencil(鉛筆で)のように「~の中」では捉えられない用法もあります。この記事では in のコアイメージから、in の持つ意味・用法について解説します。
in のコアイメージ
in のコアイメージは「何かの中にある」です。
in は「内側に存在する」ことに注目がいきがちですが、in は「外側との間に境界を設ける」イメージを含んでいることにも注意してください。
in の主な意味
英語 | 意味 | 例文・フレーズ |
---|---|---|
in | [内部を表して]~の中に | in the box(箱の中に) |
~の間に | in 2015(2015年の間に) | |
~を着ている | in one’s pajamas(パジャマを着ている) | |
~の状態である | in love(恋している) | |
[日時]~の後に | in ten minutes(10分後に) | |
[方法]~で | in English(英語で) in pencil(鉛筆で) |
in は比較的捉えやすい前置詞ですが、それでも in pencil(鉛筆で)のような使い方はよくわからないですよね。そこで、in のコアイメージからどう発想すれば、そのような意味が出てくるのか、その手がかりとして用法イメージを用いて解説していきます。
これらの用法「空間的な内部に存在する」「コンセプトを適用する」「いまから~後に」について、例文で確認していきましょう。
in の用法
「空間的な内部に存在する」ことを表す in
in のコアイメージである「何かの中にある」イメージそのままの用法です。
場所
例文:Taro was in the kitchen.(太郎は台所にいました)
in the kitchen は「その台所で」という意味。in は台所という部屋の中にいることを表しています。
例文:The students stood in a line.(その生徒たちは一列になって立っていた)
in a line は「一列になっている」という意味。
a line は「一本の直線」という意味で、in a line はその直線上(直線の範囲内)にいることを表しています。
着用
例文:He is in his pajamas.(彼はパジャマを着ています)
in his pajamas は「パジャマを着ている」という意味。in は外側との境にパジャマがあることを表しています。
方法
例文:Her parents always talk to her in English.(彼女の両親は彼女に対していつも英語で話をします)
in English は「英語で」という意味。in English は「英語空間内で」話をしているイメージになります。
「コンセプトを適用する」ことを表す in
さきほどの用法「空間的な内部に存在する」の空間部分をコンセプトに置き換えて、「あるコンセプトの内部に存在する」→「あるコンセプトを適用する」という用法が派生します。
状況・状態
例文:I’m in love with her.(私は彼女に恋をしている)
in love は「恋に落ちている」という意味。in love は「愛の空間に包みこまれている」とも言えます。
例文:People were in line at the checkout counter.(人々はチェックアウトカウンターで順番待ちをしていた)
in line は「順番を待っている」という意味。冠詞 a のない line 単体は、line のコンセプト「直線的なもの、行列、順番、方向」などを表します。
in line は、そのような line というコンセプトの内部にある状態です。言い換えれば、そこにいた人々に line のコンセプトを適用するということであり、その結果「人々は順番を待っている」という意味になります。
in line と in a line との違い
in a line は「物理的に一直線である」ことを意味します。一直線になっているという現象を表しているわけです。
一方で、in line は必ずしも一直線になっていることは意味しません。代わりに「現象から line のコンセプトが読み取れる」場合に使われます。
方法
例文:The notebook is written in pencil, so you can erase it.(そのノートは鉛筆で書かれているから消すことができます)
in pencil は「鉛筆で」という意味。冠詞 a のない pencil 単体は、pencil のコンセプト「消すことができるもの/メモやノートに向いている」などを表します。
in pencil は、そのような pencil のコンセプトを the notebook is written に適用して、「消すことができる鉛筆で書かれているノート」という状態を表しています。
参考:The note was written with a pencil.(そのメモは鉛筆で書かれた)
with a pencil も「鉛筆で」という意味を表しますが、この場合は、具体的な「ある一本の鉛筆」を使って書かれたことになります。
in pencil と with a pencil との違い
in pencil は「消すことができる鉛筆で」という意味です。たとえば、数学の筆記試験のように計算などで消したり書いたりを繰り返すことが見込まれる場合、指示文言に in pencil が使われます。逆に言えば、in pencil という文言からは、そのような理由や目的が感じ取れるわけです。
一方で、with a pencil は書く行為に付随する道具として「ある一本の鉛筆で」を意味します。目的や理由などが背景にあるわけでなく、単純に現象を述べているだけです。
「時間」を表す in
こちらは「空間的な内部に存在する」の空間を時間に置き換えた場合の用法です。内側と外側の時間的な境界に焦点を合わせた「いまから~後に」という意味でよく使われます。
時間
例文:I first visited Japan in 2015.(私は2015年に初めて日本を訪れました)
in 2015 は「2015年に」という意味。in は2015年の間に行われたことを表しています。
~後
例文:I’ll see you in ten minutes.(10分後に会いましょう)
in ten minutes は「10分後に」という意味。in はいまから10分が経過した時点のことを表しています。
in ten minutes は外側との境が10分であることを表していますが、その境で I’ll see you というイベントが発生するわけです。
私たちが間違えやすい after ten minutes がどうしてダメなのかなど、より詳しくは以下の記事をご参照ください。
まとめ
in のコアイメージは「何かの中にある」です。
in の主な用法は「空間的な内部に存在する」「コンセプトを適用する」「いまから~後に」です。
カテゴリ | 用法 | フレーズ | 意味 | 備考 |
---|---|---|---|---|
空間的な内部に存在する | 場所 | in the kitchen | その台所で | |
〃 | in a line | 一列になっている | 物理的に一直線 | |
着用 | in his pajamas | パジャマを着ている | 外側との境にパジャマがある | |
方法 | in English | 英語で | 言語としての英語空間内で | |
コンセプトを適用する | 状況・状態 | in love | 恋に落ちている | love(愛)のコンセプトを適用 |
〃 | in line | 順番を待っている | line(直線的なもの、行列、順番、方向)のコンセプトを適用 | |
方法 | in pencil | 鉛筆で | pencil(消せる、メモ向け)のコンセプトを適用 | |
時間 | 時間 | in 2015 | 2015年に | |
~後 | in ten minutes | 10分後に | 何かが発生する境がいまから10分である |
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コメント
やはり前置詞の説明は、絵が付いていると分かりやすいと改めて認識しました。特に、状況・状態のinはイメージがあることで、より強固な印象が残り、覚えることができます。また、〜後のinについては、私もなんとなく覚えていたのですが、今回の説明で少し理解できました。ただ、そこはまだスッキリ!というところまでは達していません。やはり前置詞、難しいですね。
わかりやすかったです。inは大きく分けて「場所」「時間」「方法」の3つを表すのに用いられるという説明が、頭を整理するのに役立ちました。また、in pencil とwith pencilの意味の違いに関する説明が非常に興味深かったです。
「〜の中に」というinの用法以外の使い方がよく分かる記事だった。in lineとin a lineの意味の違い、in pencilとwith a pencilの意味の違い、in a pencilではなくin pencilであることと、pencilのコンセプトが明確に整理できたことがよかった。
多くの場合、本当になんとなく使っても問題ないinですが、「中に」というだけでは説明のつかないいくつかの例も、この記事によりようやく何とか把握できた気がします。コアイメージの「外側には存在しない」のところは新しい発見でした。
in の用法で知らなかったものがいくつかありました。場所や状況を表すという事は知っていましたが、着用、~後(時間)、数量の割り当てなどは初めて知りました。会話でもよく使われそうなので覚えておきたいと思います。
inのまとめの中の一覧表が、前置詞inについての意味と用法を的確に要約していて大変よかったです。また、in ten minutes がなぜ10分後であるのかをイラストでイメージ化しているのも、活字だけでは理解が難しいので、助かりました。
この記事を読むことで、”in”について完全には理解していなかったことに気づきました。コアイメージの理解度は間違っていなかったですが、”in line”と”in a line”や”in pencil”と”with a pencil”の違いは何度も読み返しました。大変参考になりました。
INの用法は簡単そうで難しいというのを改めて実感しました。コアイメージの説明は非常にわかりやすかったのですが、コンセプト、時間、方向や方角については、実際に使う際にはイディオム的に覚えておかないと咄嗟に出てこない気がしたので、日ごろから繰り返し頭に入れていきたいと思います。
inのコアイメージの説明が非常に分かり易くて良いです。絵でイメージすることで、難しい事も解決できますし、もっと沢山の記事を読みたいと思いました。最後のまとめも分かり易く、記事全て、非常に良いです。
inには、内側にあるというときに使うイメージがありましたが、こうやってみると色々な意味で使われているんだなと思いました。細かいニュアンスも例文の説明でよくわかりました。ただ、コアのイメージは「何かの中にある」ということで間違いないのですね。
大変わかり易かったです。ありがとうございます。
また他の記事も大変参考にさせていただいております。
in 10 minutes のときのinだけ、なぜ外側と内側の境目を指すのかが分からないのですが、
他にも境目を指すようなinの用法はありますでしょうか?