
基本動詞 want は「欲しい」でだいたい理解できますが、それだけでは捉えきれない用法もあります。
たとえば、日常英会話で頻出する “Do you want to ~?” という表現。これは「~しない?」というお誘いとして使われることが多いのですが、日本語の感覚ではわかりにくいですよね。
この記事では、want の意味を、コアイメージから意味の樹形図でつなげて解説します。want の本当の姿を、ぜひここでつかんでいってください。
want のコアイメージ
want のコアイメージは「欠けているものが欲しい」です。

元々は「足りていないこと」を表す言葉で、貧しい状態を意味するようなネガティブな文脈で使われていました。そこから徐々に「欲しい」「~したい」というポジティブな意味合いでも使われるようになりました。
want の意味の樹形図
コアイメージを元に、want の主な意味を分類したものが、次の樹形図です。

want の主な意味と例文
欲しい

SVOの文型のとき、「SはOが欲しい」という意味になります。

例文:I want a new phone.(新しいスマホが欲しい)
want a new phone は「新しい電話が欲しい」という意味。S(I)+V(want)+O(a new phone)の型になっています。
(彼はもっとお金が欲しい)
Do you want some coffee?
(コーヒーいる?)
I don’t want anything.
(何もいらない)
(人に)用がある

want(欲しい)の対象が物ではなく人になるとき、「人に用がある」という意味になります。

例文:The boss wants you.(上司があなたに用がある)
The boss wants you は上司が「あなたという人物を呼んでいる」という伝言です。
用件が何であるかは問わず、とにかくあなたに来てほしいと思っています。パソコンのエラーでも、会議の相談でも、ランチの誘いでも、理由は何でもありえます。伝える側も用件を知らないか、あるいは用件に関心がなく、ただ「呼んでるよ」と伝えているだけです。
比較:The boss needs you.(上司があなたを必要としている)
The boss needs you になると、上司が「あなたの能力やスキルを必要としている」というニュアンスが出ます。パソコンのエラーの場合、あなたがITに詳しい人であれば、「あなたでないと解決できない問題がある」という含意が入るので The boss needs you のほうがしっくりきます。
want は「人を求める」、need は「能力・役割を必要とする」という違いで捉えるとよいでしょう。
(電話であなたに用がある人がいる)
You’re wanted in the meeting room.
(会議室に来てほしいそうだ)
You’re wanted by the FBI.
(FBIに指名手配されている)
~したい

want の欲しい対象が行為(to do)の場合、「Sは~することを欲する」→「Sは~したい」となります。

例文:I want to go home.(家に帰りたい)
want to go home は「家に帰ることを欲する」→「家に帰りたい」となります。
(彼女は先生になりたい)
I don’t want to talk about it.
(その話はしたくない)
I want to try this cake.
(このケーキを食べてみたい)
Do you want to keep this photo?
(この写真、取っておきたい?)
Do you want to go to college?
(大学に行きたい?)
~しない?(提案)

「~したい」を疑問文にした “Do you want to ~?” は基本的には相手の欲求を確認する表現ですが、話者自身もその行動に関わる場合、カジュアルな誘い・提案として機能し、「~しない?」という意味になります。

例文:Do you want to come with us?(一緒に来ない?)
直訳したら「あなたは私たちと一緒に行きたいですか?」ですが、話者自身も「一緒に行く」という行動に当然関わっているため、「一緒に行かない?」という提案になっています。
なお、ここで日本語訳を「私たちと一緒に行きたい?(あなたは私たちと一緒に行きたいですか?)」としてしまうと、英文のニュアンスとはズレてしまうので要注意です。詳しくは後述のコラムで補足します。
(お昼でも食べに行かない?)
Do you want to take a break?
(ちょっと休憩しない?)
Do you want to go for a walk?
(散歩に行かない?)
~してほしい

want の後ろに O(人)+to do(~すること)が続く場合は、「SはOが~することを欲する」→「SはOに~してほしい」となります。

例文:I want you to listen to me.(私の話を聞いてほしい)
want you to listen to me で「あなたが私の話を聞くことを欲する」→「あなたに私の話を聞いてほしい」となります。
(彼女は私に手伝ってほしがっている)
I want you to be happy.
(あなたには幸せでいてほしい)
I don’t want you to worry.
(心配しないでほしい)
【コラム】日本語の「~したい?」に潜む罠
ここまで見てきたように、”Do you want to ~?” は英語では「~しない?」というカジュアルな誘い・提案になりますが、直訳して「~したい?」で理解してしまうと、英文本来のニュアンスとは異なるものになってしまいます。ここではその理由を掘り下げてみましょう。
Do you want to date me? を日本語にすると?
“Do you want to date me?” は英語では「ねえ、私とデートしない?」という気軽な誘いです。話者自身の欲求は文の構造には表れず、あくまで「あなたの気持ち」をシンプルに尋ねることで、押しつけがましさを消しています。
ところが、これを「あなたは私とデートしたいの?」と日本語に直訳して理解すると、「もしあなたが希望するなら、しょうがないなぁ、デートを受けてあげようかな」のような上から目線の表現かなと勘違いしてしまいますよね。
同じような事例を取り上げてみましょう。ある大学の日本語教育の研究で報告された事例では、欧米系の学生が教師に向かって「先生はコピー機を使いたいですか」と聞いたそうです。英語の “Do you want to use the copy machine?” をそのまま訳したのだと思われますが、日本語としてはなんとなく失礼に聞こえたという方が多いのではないでしょうか。なぜこんな風に、Do you want は上から目線のセリフのように聞こえてしまうのでしょう?
まず肯定文「~したい」について考える
この問題を理解するために、さきほどの日本語「~したいの?」ではなく、まず肯定文の「~したい」について考えてみましょう。
日本語では、相手がいる場で「◯◯したい」と言うとき、それは「自分一人では実現できないことを、その場にいる人に表明する」行為になります。
たとえば、幼い子が「お風呂に入りたい」と言うのは、一人では入れないから大人に向けて言っているのです。一人で入れるようになったら「お風呂に入る」と現在形で言うようになり、「入りたい」は使わなくなります。
これを踏まえて、大人が大人に対して「お風呂に入りたい」「寝たい」と言った場合を考えてみてください。言われた方は「そんなこと言われても知らんがな、早くお風呂に入りなよ」のように返すはずです。これは「自分一人でできることなのだから、私に言われても困る」という反応です。
ここで重要なポイントですが、日本語では「聞き手は話し手の立場を再現しながら話を聞いている」という性質があります。そのため話し手が「~したい」と言えば、それは聞き手も含めた場全体で実現すべきことのようになり、聞き手にはそれを叶えるための協力が暗に求められるのです。
だから、日本語で大の大人から「お風呂に入りたい」と言われたら、聞き手は「自分に何を求められているんだろう?」となって、「知らんがな」となるわけです。
疑問文「~したいの?」にすると上から目線になる理由
では、疑問文「◯◯したいの?」ではどうなるでしょうか。相手が「うん、したい」と答えた場合、先ほどの仕組みにより、それを叶える判断は質問した側に委ねられます。つまり、「◯◯したいの?」と聞いた時点で、質問者は相手の欲求を叶える権限をもつ側に立っていることになるのです。
だから、日本語で「私とデートしたいの?」と聞くと、「してあげてもいいけど?」のような上から目線のニュアンスが出てしまうわけです。
同様に、先ほどの「先生はコピー機が使いたいですか?」も、まるでコピー機の使用許可をこちらが持っているかのような響きになってしまっていたので、なんとなく失礼な印象を与える表現になってしまっていたわけです。(この場合は「先生はコピー機を使いますか?」と現在形にすれば違和感のない表現になります。)
英語の “Do you want to ~?” はあくまでフラットな問い
一方、英語の “Do you want to ~?” はあくまで個人の内面の欲求を問う構造であり、日本語のように「聞き手は話し手の立場を再現しながら話を聞いている」わけではありません。だから、聞き手が自動的に「叶える側」のポジションに配置されることはなく、対等な誘い・提案として機能するのです。
“Do you want to date me?” のニュアンスを正しく訳すなら、「私とデートしない?」です。これを日本語にしたときに「私とデートしたいの?」と訳してしまうと、英語にはない上下関係が生まれてしまいます。want を使った表現を日本語に訳すときには、この違いをぜひ意識してみてください。
なお、「聞き手は話し手の立場を再現しながら話を聞く」という日本語の性質は、日本語が「話し手と聞き手を場に埋め込む」言語であることに由来します。詳しくは、『英会話イメージトレース体得法』にて詳述しています。
まとめ
want のコアイメージは「欠けているものが欲しい」です。

コアイメージを元に、want の主な意味を分類したものが、次の樹形図です。

| 意味 | 例文 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| 欲しい | I want a new phone. | 新しいスマホが欲しい |
| (人に)用がある | The boss wants you. | 上司があなたに用がある |
| ~したい | I want to go home. | 家に帰りたい |
| ~しない?(提案) | Do you want to come with us? | 一緒に来ない? |
| ~してほしい | I want you to listen to me. | 私の話を聞いてほしい |




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