「この even ってどういう意味? even ってどうも訳しにくいなぁ…」ーそんな方向けに even のコアイメージを元に、even の意味・用法(「平らな」「同一の」「偶数」「同等にする」「~でさえも」「いやまったく」「いっそう」)を解説しました。even の意味がどのように派生していっているのかも記載しています。
evenのコアイメージ
evenのコアイメージは「差に注目して、上乗せして、平らにする」です。
evenが副詞として用いられるときは、「差に注目する」「上乗せする」という動きを表す部分を組み合わせた「差分の行動・状態を強調する」イメージになります。
※副詞は動きを加えて、動詞などの意味を軌道修正する働きをします。副詞についての詳細は「副詞って何?副詞の用法・位置まとめ」をご参照下さい。
コアイメージだけではわかりにくいと思いますが、ここでは even は常に何かとの差に注目している、何かと比較している感覚があることを知っておいて頂ければと思います。
evenの意味と用法
【形容詞】平らな、凹凸のない
例文:The floor must be completely even before we lay the tiles.(タイルを敷く前に、床は完全に水平になっていなければいけない)
デコボコが一切ない平らな状態でなければいけない、ということです。
【形容詞】同一の、互角の
例文:The score is even.(スコアは同点です)
お互いのスコアに差がなく平らです。 「同じレベル、同じ得点」を表しています。
【形容詞】偶数(丁度)
例文:an even number(偶数)
an even numberは何かモノを2列に並べていったとき、出っ張りのない平らな数ということで偶数となります。
なお、奇数はan odd numberですが、oddの語源は「岬(先端)」です。そこから「デコボコ」「奇妙な」という意味が派生しています。
競馬のオッズ(odds)もodd由来で、出走馬を一覧表示したときにそれぞれの倍率がデコボコになっているイメージです。
【動詞】平衡させる、同等にする
例文:We put on two players to even things up a bit.(我々は状況を改善するために二人の選手を投入した)
試合で劣勢に立たされているチームの指揮官が、状況を改善する(勢いを上乗せする)ために二人の選手を投入した、という意味です。
【副詞】~でさえも、~すら(肯定)
N | 太郎の母親と信一の母親が電話で話をしています。 |
信一の母 | 太郎くんはお行儀いいですよ。この前いらっしゃったときは、妹の真美まで一緒に遊んでくれて…。真美はすっかり太郎くんに懐いちゃって、ついて回ってたんですよ。 |
太郎の母 | あらっ、本当ですか。 |
信一の母 | それに昨日は、おじいちゃんとおばあちゃんまで太郎くんにお世話になったらしくて。 |
例文:Taro even helped my parents-in-law yesterday.(太郎は昨日、義理の両親までも助けてくれた)
evenが副詞として用いられるときは、基準から比較している感じになります。
例文のevenは前提となる基準が「友だちの妹(真美)と遊んであげたこと」であり、そこからもっと高いレベルとして「友だちのおじいちゃんやおばあちゃんを手助けしてあげたこと」を強調して導いています。
evenが指し示す「もっと高いレベル」とは「予想以上のこと」や「驚くべきこと」などです。そのような感情を込めてevenを使います。
※evenは日本語と対応させにくい単語です。日本語だと「妹」を基準として「おじいちゃんやおばあちゃんまで」と名詞のほうに強調を施しますが、英語だとplayを基準としてeven helpという行為を強調します。このあたりの感覚のズレがevenを使いにくくしている一因です。
【副詞】(それどころか)いやまったく
例文:I’m willing, even eager, to help.(喜んで、いやぜひともお手伝いします)
例文のevenは前提となる基準がwilling(進んで~する)であり、そこからもっと高いレベルとしてeager(熱望して~する)を強調して導いています。
【副詞】[比較級を強めて]いっそう、なお
例文:This novel is even better than his first.(この小説は彼の処女作よりさらに良い)
例文のevenは先に高いレベルとしてbetter(より良い)を強調し、その後に前提となる基準としてthan his first(彼の処女作よりも)を持ってきています。
【副詞】~でさえも、~すら(否定)
N | 太郎がお父さんに、お母さんの文句を言っています。 |
太郎 | この前だって、俺が『スパイク買って』って言ったら『まだ履けるでしょ!』って却下したくせに、『これ、可愛いでしょ? 花子の靴』とか言って買ってやんの。花子はまだ歩けもしないのに。 |
例文:Hanako can’t even walk yet.(花子はまだ歩くことさえできないのに)
否定notのあとに続くevenは、ターゲットレベルが高い位置ではなく低い位置に変わります。
例文のevenは前提となる基準が「赤ちゃんの花子が靴を必要とすること」であり、そこからもっと低いターゲットレベルとして「歩くこと」を強調して導いています。
even の意味がどのように派生したのか
even はよく質問される英単語です。その理由は「同等」という意味の他に、「~でさえも、~すら」という全く異なるように見える意味をもっているからです。
ただ、そうはいっても同じ英単語で出自も同じである以上、何かしら共通しているコアイメージがあります。
その even のコアイメージとは「差に注目して、上乗せして、平らにする」です。
「同等」とは、差分を加えた結果の状態を表していたわけです。
※私たちにとってevenは「同等」のイメージが強いかもしれませんが、その結果をもたらす動きのニュアンス「差に注目して、上乗せする」もevenに含まれていることに注意して下さい。
このように even は「何かとの差、何かとの比較」を意識しながら使われる英単語です。
「~でさえも、~すら」という意味は、基準となる行為や状態と比較して、ある行為や状態のレベルの高さ(または低さ)を強調することから生まれているのです。
「差分を加える」→「基準に上乗せする、そのような行為や状態を強調する」という具合に派生してきたというわけですね。
まとめ:even の意味・用法まとめ
例文 | 意味 | キーワード |
---|---|---|
The floor must be completely even… | 【形容詞】平らな、凹凸のない | 一面が平ら(水平) |
The score is even. | 【形容詞】同一の、互角の | 二者が平ら |
an even number | 【形容詞】偶数(丁度) | 二つの列が平ら |
We put on two players to even things up a bit. | 【動詞】平衡させる、同等にする | 二者を平らにする |
Taro even helped my parents-in-law yesterday. | 【副詞】~でさえも、~すら(肯定) | 基準(友だちの妹と遊んであげた)との差を強調 |
I’m willing, even eager, to help. | 【副詞】(それどころか)いやまったく | 基準(willing)との差を強調 |
This novel is even better than his first. | 【副詞】[比較級を強めて]いっそう、なお | 基準(than his first)との差を強調 |
Hanako can’t even walk yet. | 【副詞】~でさえも、~すら(否定) | 基準(靴が必要)との差を強調、否定により低いレベル |
コメント
最初から分かりやすく説明されていて、特にコアの絵が印象深く、絶対に忘れないという感じでした。
even なんてまったくイメージができていませんでしたから、話すときも書くときも、頭には浮かんでくることのない単語でした。同点のときやゴルフで「イーブン」と使う程度でしょう。とても理解しやすかったですし、記憶にも残りやすいと思いました。ありがとうございます!
かつてからEVENにはいろいろ使い方があってややこしい単語だなと思っていましたが、すべて”差に注目して、上乗せして、平らにする”という意味に達するということが図による解説でとてもよくわかりました。今後は迷わずに使えるようになりそうです。
今回の内容は少し難しかったですがevenについては理解できました。even は常に何かとの差に注目している、何かと比較している感覚があるのですね。
evenには様々な意味があり、そのまま意味を覚えたとしても、3日後には忘れてることが多いです。しかし、この記事のイメージや例題を頭に思い浮かべるだけで、安心して使用できるレベルになりました。「何かとの差、何かとの比較」に意識して、会話に取り入れたいと思います。
品詞ごとの意味や用法の解説がありわかりやすかったです。副詞の用法については、evenを入れた文章と入れない文章の比較などがあるとよりわかりやすいかなと思いました。英会話でのevenの使いどころが難しいところがあるので、上手に使うコツの解説があるとありがたいと思いました。
わかりやすかったです!
ありがとうございます!励みになります。