そもそもクリスマスって何なのでしょうか?「メリー・クリスマス!」もみんな知っている挨拶ですが、いつ言えばいいのか不安な方も多いと思います。
この記事ではクリスマスの本来の意味から、メリークリスマスの使い方、さらに昨今のアメリカにおけるクリスマス事情まで解説しました。編集部の遠藤と今井による対談形式でお送りします。
今井 この前、友だちから「クリスマスに恋人と過ごす予定なんだけど、『メリークリスマス!』っていつ言えばいいの? クリスマスイブ? それともクリスマス当日なのかな?」という質問があったんですが、よくわからなかったので教えてください!
遠藤 クリスマスはすっかり定着していますが、クリスマスがそもそも何なのか知らない方も多いですよね。それではクリスマスの本来の意味から解説していきましょう。
クリスマスの意味
遠 クリスマスは英語で Christmas と書きますが、実は2つの単語が組み合わさったものなんです。わかりますか?
今 いま言われて気がついたんですが、スペルに「キリスト」が入ってます?
遠 そうです、Christ は「キリスト」です。後の mas は「ミサ/祭礼・礼拝」という意味なんです。
mas は Michaelmas(聖ミカエル祭、9月29日)など、他の祭礼にも使われていますよ。
今 Christmas は「キリストの祭礼」ってことですか~。
クリスマスは「キリストの誕生日」ではない?
今 あれっ? それじゃあ、もしかしてクリスマスって「キリストの誕生日」って意味ではないんですか?
遠 そうですね。あくまでも「祭礼」であって「誕生日」を意味しているわけではないのです。
キリストの誕生日は記録に残っていないので、後世の人々が「冬至祭」のあった12月25日に誕生したってことにして、お祝いをするようになったみたいですね。(参考:イエス・キリストは本当に12月25日に生まれたのですか?)
今 クリスマスの起源も結構適当なんですね(笑)
クリスマス・クリスマスイブはいつ? なぜイブにお祝いするの?
今 クリスマスが「12月25日」だとすれば、クリスマスイブは「12月24日」ですよね。でも、どうしてクリスマスイブまでお祝いするんですか?
遠 実は、クリスマスイブもクリスマスの一部だったんです。というのも、クリスマスという記念日が制定された頃は、一日の始まりが日没から始まっていたからです。ユダヤ暦という暦の時刻系なんですけどね。
今 えぇっと、クリスマスという一日は太陽が沈んでから始まるってことですか?
遠 その通りです。イブとは evening を省略したもので、クリスマスイブは本来「12月25日の始まりである晩」を表していました。
それが「午前0時」から一日が始まるように変更されたときに、「クリスマスイブ(12月24日の晩)」と「クリスマス当日(12月25日/正確には12月25日の日没まで)」に分断されてしまったわけなのです。
今 へぇ~。ということは、本来はクリスマスイブから教会に集まってミサを行っていたってことですか?
遠 そういうことですね。一日の区切りを変えたことで、クリスマスにやることが12月24日と25日の二日間にまたがってしまったというわけです。
メリークリスマスはいつ言う? メリークリスマスの意味は?
今 じゃあ、メリークリスマスという挨拶はクリスマスイブから使っていいってことですね。
遠 日本だとそれで大丈夫です。でも、海外だとメリークリスマスという挨拶は12月上旬頃から使われるんですよ。
今 えぇ!? 12月上旬に「メリークリスマス!」って違和感ありまくりですね…。うーん、どうしてなんでしょう?「メリークリスマス!」って「クリスマスを楽しもう!」って意味じゃないんですか?
遠 それではメリークリスマスというフレーズについても解説しておきましょうか。
メリークリスマスのメリーの意味
遠 メリークリスマスは “Merry Christmas” と書きます。merry のイメージは「愉快な、笑い楽しむ」です。
ここから “Merry Christmas” は「(家族や親しい友人たちと笑顔で楽しく過ごす)愉快なクリスマス」という意味になります。
遊園地のメリーゴーランドも英語では Merry-Go-Around と書きます。自然と笑顔にさせてくれるような楽しいグルグル回るモノということですね。
今 言われてみれば確かに! メリーはクリスマス以外にも使われていますね。
メリークリスマスに省略されている言葉
遠 さて、挨拶で使われる「メリークリスマス」には省略されている言葉があるんですが、わかりますか?
今 うーん、何でしょう?
遠 12月上旬頃から使われる「メリークリスマス」は、”I wish you a merry Christmas.” の省略なんです。「あなたが愉快なクリスマスを過ごせますように」ということですね。(参考:I wish you a merry Christmas の構文解説)
今 そうであってほしいと願ってるわけですか。
遠 一方で、クリスマスイブやクリスマス当日に使われる「メリークリスマス」は、”Have a merry Christmas.” の省略で、「クリスマスを楽しんでね」とか「クリスマスを楽しもう」という意味合いが強くなります。
今 ”Have a nice day.”(良い一日を)と同じ形式ですね。クリスマス当日の挨拶は「願い」というよりも「楽しんでね」って感じになるのは自然なことだと思いますが、省略されている言葉が違っていると考えればいいんですね。
遠 そうですね。あと、私たちは「メリークリスマス」をパーティーなどを盛り上げるフレーズとして使いがちですが、本来はもう少し落ち着いた意味合いの言葉だということは知っておいてもいいですね。
今 ヒャッホーイ系の言葉ではないんですね(笑)
最近、アメリカでは「メリークリスマス!」と言わない?
今 そういえば、僕がアメリカ人の友だちに “Merry Christmas!” って声をかけたら “Happy Holidays!” って返ってきて「おやっ?」と思ったことがあります。
話を聞いてみると、最近は “Merry Christmas!” ではなく “Happy Holidays!” と言う人が増えてるみたいですね。
遠 アメリカには、キリスト教以外にユダヤ教・イスラム教・仏教など信仰の異なる人たちがたくさんいますからね。
今 あっ、それで思い出しました。イスラム教の人々に “Merry Christmas” と言わないようにするってのはわかるんですよ。なんとなくいつもキリスト教とケンカしているイメージがあるので。
でも、ユダヤ教ってキリスト教と似た宗教じゃなかったでしたっけ? なぜ、ユダヤ教の方々に “Merry Christmas” と言ったらダメなのですか?
遠 簡単にいえば、元々はユダヤ教があったところに、ユダヤ教を否定する形でキリスト教が出てきたからなんです。
そして、キリスト教が出てきて以来、ユダヤ教徒はキリスト教徒によって、ずっと迫害され続けてきました。そのような自分たちを迫害してきた人たちの象徴をお祝いする掛け声なんて心中穏やかに聞いていられない、というわけですね。
今 あ~、自分をいじめ続けてきた、いじめっ子軍団のボスの記念日をお祝いしようっていう風に聞こえてしまうというわけですね。
遠 簡単に言えばそういうことです。そこで、宗教色を取り除いた “Happy Holidays” という表現を使う人がアメリカでは増えているわけですね。
最近、アメリカではわざと「メリークリスマス!」と言う?
今 確かに “Happy Holidays” は「良い休日を」みたいな感じでニュートラルですよね。まあ、味気ない気もしますが…。
遠 そうですね。こういうのをポリティカル・コレクトネス(通称ポリコレ)と呼ぶのですが、やはりマイノリティー(社会的少数派)に配慮した表現なので、マジョリティー(社会的多数派)の中には不満を持つ人もいるようです。
「どうして我々が昔からの言い方を変えなければいけないのか」という感じですね。
今 なるほど。「メリークリスマス」という表現ひとつ取っても、難しいところがあるんですね…。そういう意味では、なんでもありの日本に生まれてよかった気がします。
しかし、今回の話でクリスマスについて一通りわかった気がします。ありがとうございましたー。
遠 こちらこそありがとうございました。
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コメント
メリークリスマスとは、単なる挨拶だと思っていましたが、キリストの意味があったとは全く知りませんでした。
クリスマスがキリストの生誕の日ではないということは知っていましたが、そこから話を上手に拡大して、クリスマスにまつわるいろいろなトピックを手際よくまとめている印象を持ちました。蛇足ですが、一番最後のポリティカル・コレクトネスとトランプ大統領にかかわる解説は違和感を持ちました。
一日の区切りをちょっと変えた結果クリスマスが二つにまたがる事になり、それで生まれたイブという日がいろんな日に対して使われているのは面白いですね。それはそうとポリコレの話題に触れるとは思いませんでした。
もうすぐクリスマスという時にクリスマスに関する記事を読むと面白いですし、気分が盛り上がります。記事も、対話形式なっており読みやすかったです。今後、このような記事が増えてくれると嬉しいです。
言葉の意味から習慣までを含めた内容だったので長めの文章でもすっと頭に入ってきました。クリスマスイブと言われるゆえんは元々ユダヤ歴からというのは知らなかったので大変勉強になりました。この時期にアメリカにいるとHappyHolidays!と店員さんから言われることがほとんどだったのでメリークリスマスが復権するのかどうかは興味深いです。
今や日本でもイベント化が定着して本来の意味すら分からなくなってる人も多く、こういう対話形式で解りやすく解説してくれているのでとても読みやすかったです。語意を理解する事で今まで気にしなかった事をあらためて知る事も出来てとても勉強になりました。
今回の記事も楽しく読ませていただきました。海外の生きたカルチャーと言語についてはなかなか詳しく知る機会がないので、学生にぜひ読んでほしい内容でした。そして、Merry Christmas と Happy Holidays の違いも理解できました。ただ、まだまだアメリカではクリスマスカードには Merry Christmas と書かれているものもあるような気がします。いつの日か we wish と we hope の違いについても記事にしていただければ幸いです。
日本ではあまり意識できませんが、キリスト教以外の宗教の人達に配慮して、Happy holidaysと発言するのは非常に重要なことですよね。
為になる話をありがとうございます!