誤解してません?This one please. の please は「ください」ではないですよ~。

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とりあえず “This one, please.” さえ知っていれば買い物はできるよ!

今井 pleaseを解説した前回の記事を読んだ友人から質問があったんですが、うまく答えられなかったんです。申し訳ないのですが、教えてもらえませんか?

お店の人に注文するときに “This one, please.” って言うけど、この please はどういう意味なの?「これください」の「ください」って意味じゃないの?
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“Please.”で「ください」の意味にはならないの?

遠藤 ビッキーと今井くんは、この “This one, please.” ってフレーズに対してどういうイメージを持っているの?

ビッキー やっぱり please がついているので politeness(丁寧)のイメージはあります。うーん…、それ以上は考えたこともありません。

 僕は “This one, please.” は「これください」ってことで、それ以上でもそれ以下でもない感じですね。でも、please は「欲しい」とか「買います」という意味での「ください」とは違うと思います。

 …で、実際のところはどうなんですか?

 結論から言うと、please は「ください」に対応する単語ではありません

 やっぱりそうなんですね。じゃあ、「ください」はどこに行ったのですか?

“This one, please.”の「ください」はどこに?

 ビッキー、この “This one, please.” をちゃんと主語や動詞を使って言うとしたら、どういう英文になりますか?

 うーん、そうですね…。”Can I have this one, please?” とか “I’d like this one, please.” とかですね。

 そうなりますよね。そういった表現が省略されて “This one, please.” という3つの単語になっているわけです。そしてここで重要なのは、その省略されている Can I have や I’d like の部分が「ください」に当たるということです。

 むむむっ、なんか罠みたいですね。じゃあ、この please って何ですか?

“This one, please.”における please の正体

 この please も、前回と同じように “if it please you” が省略されたもので、「もしあなたが受け入れてくれるならば」とか「もしあなたが良かったら」といったニュアンスを表しています。

 つまり、「店員さん、もしあなたが良かったら、これを売って欲しいんですが」っていう感じで、売り手のほうに「売るか売らないかの決定権がある」ことを明示しているわけです。そうすることで「丁寧さ」を表現しているわけです。

 えっ? 今の説明、ちょっとよく分かりません。売り手の方に「売るか売らないかの決定権がある」というのはどういう意味ですか?お店なんだから、売ってくれるのが当然じゃないかと思うんですが…

 確かに、現代ではお店に置いてある物は「必ず買って良い」という認識になっているよね。だけど、昔はそうではなかったんじゃないかな。京都の「一見さんお断り」のお店を想像してもらうと分かりやすいと思うけど、かつてはその相手に売ってもいいかどうかをお店の方が決めていた時代もあったはずだよね。

 なるほど。今でこそ「お客様は神様です」なんてフレーズがありますけど、売り手の方が強かった時代に生まれた表現ということですね。逆に言えば、please をつけないと「買ってやるからよこせ」といったふうに受け取られてしまうってことで、いいんでしょうか?

 ネイティブの感覚からすると、それに近いかな。だから、たとえファストフード店で注文するような場合でも、please をつけなかったら、売り手である店員を尊重していない偉そうな印象を与えてしまいますね。

“Can I have this one, please?”と言ったほうがよい時

 ファストフード店やおみやげ屋さんなどのカジュアルなお店では “This one, please.” で大丈夫ですが、もう少しフォーマルなお店ではちゃんと “Can I have this one, please?” まで言ったほうが良いですよ。

 あ~。”This one, please.” だと「これを。もしあなたが良ければ」としか伝えていないからか…。

 それで思い出したんですけど、友だちのネイティブと一緒に海外旅行で飛行機に乗っていたときに、僕がキャビンアテンダントさんに “Coffee, please.” ってお願いしたら、友だちのネイティブに「そこは “Can I have a cup of coffee, please?” だろ」って言われたことがあるんです。それも同じで「コーヒーを。もしあなたが良ければ」と伝えていたってことですね。

 こちらからキャビンアテンダントにお願いするときは、ちゃんと”Can I have a cup of coffee, please?”という文章にしておいたほうがいいね。そうしないといくら please がついていてもぶっきらぼうな感じになってしまうからね。

 でも、出てきたご飯を食べているような場面で、キャビンアテンダントさんから “Would you like to have some tea or coffee?” って聞かれたときには “Coffee, please.” だけでも大丈夫だよ。

 そうですね。私も相手に依頼をするときはちゃんと疑問文を使いますが、向こうからの提案への返答についてはそこまでこだわりませんね。

まとめ:”This one, please.”の please について

 オーケー。では、本日の話をまとめておきましょうか。

  • please には欲しいというニュアンスを表す「ください」の意味はない。
  • 「ください」の意味は、省略されている Can I have や I’d like の部分にある。
  • please を使うことで売り手に決定権があることを明示し、丁寧さを表現している。
  • こちらから相手に依頼をするときは “Can I have this one, please?01)より丁寧な表現は “May I have this one, please?” です。と省略せずに述べたほうがよい。

 よく分かりました。友人にも伝えておきます。ありがとうございました。

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注釈   [ + ]

01. より丁寧な表現は “May I have this one, please?” です。

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Masayoshi Endo
英語と日本語の研究をしています。専門分野は認知言語学です。著書は『英会話イメージリンク習得法』『英会話イメージトレース体得法』、英会話教材『英会話エクスプレスシリーズ』。英会話エクスプレス出版代表。日本認知言語学会所属。