§9-1 話し手の立ち位置

このページの読了時間:約259

【1】日本語は場に入り込む

では、ここからは「話し手の立ち位置」を取り上げていきたいと思います。話の内容によって場に入り込んでしまう日本語は「一人称ゲーム」にたとえることができます。

一人称ゲームというのは、ゲームセンターなどにある銃で画面に次々にあらわれる敵を打ち倒すようなゲームです。銃は手元にあり実際に触って使うことができますが、敵は画面の中です。

一人称ゲームの特徴は、プレイヤー自身の姿は画面上には現れないということです。画面に現れる世界は全てプレイヤーが見ているもので、その意味でプレイヤーは画面に入り込んでいます。

一人称ゲームの場合、プレイヤーの動作は「敵」に狙いを定めて「撃つ」です。つまり「敵を・撃つ」という順になります。これを日本語に置き換えると「何を(対象物)・どうする(動詞)」という表現順序になります。

【2】英語は場から切り離す

日本語が「一人称ゲーム」ならば、英語は「インベーダーゲーム」です。むかし喫茶店で流行ったUFOを撃ち落とすゲームです。

インベーダーゲームの特徴は、プレイヤーを表す自機が画面上に表示されていることです。プレイヤーはその自機を操作します。この状況は操作をする人(プレイヤー)と画面上の自機が切り離されているといえます。このように英語では自分自身を場から切り離すのです。

インベーダーゲームでは、ゲームの進行は「自機が、撃つ、敵を」という順序になっています。これを英語に置き換えると「subject・verb・object」という表現順序になります。

【3】脳における自他分離の処理

日本語は「自分が場に入り込む」のに対して、英語は「自分を場から切り離す」ということを述べました。

I love you. は日本語では「愛しているよ」で「私は」という主語を明示しません。しかし、英語ではかならず「I」というsubjectから始めなければいけません。そこに日本人が英語を話すときの難しさがあります。自分を場から切り離すという一手間が必要なのです。

場から自分を切り離すという「自他分離」は脳科学的にみると右脳が受け持っている働きです。一方で言語を処理するのは左脳です。

そうすると英語話者は一度右脳を経由して左脳のほうに処理を移していることになります。一方で、日本語話者はそのまま左脳だけで処理をしています。日本語は自他分離という右脳が受けもつ機能を刺激せずに話をしている、つまり自分を場に埋め込んだまま話をしているということです。

英語話者は英語という主語を強要される言語を使っていくうちに「自他分離」をする右脳を経由して左脳で言語処理をするという回路が脳にできあがっていきます。日本人が英語を話すときは脳にそういう回路ができていないので、なかなか主語がスムーズに出てこないということになります。

しかしこういう回路は先天的なものではなく後天的なものです。日本人でも英語を学ぶうちに少しずつ「右脳→左脳」回路ができてきます。その回路をつくるためにも日本人は英文を話すときにsubjectを非常に強く意識しないといけないのです。

▶次のセクションはこちら

§9-2 subjectと主語
先ほど「話し手の立ち位置」のところで述べたように、日本語と英語の大きな違いはプレイヤーを表すモノが画面上に見えているか見えていないかでした。...