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未来を表す表現「will」「be going to」「be doing」「will be doing」の違いについて解説します。
【1】will
英語に未来形はない
それでは「未来を表す表現」について学んでいきましょう。本書では英語に未来形という時制はないという立場をとっているので、「未来形」ではなく「未来を表す表現」という言い方をします。まずは英語に未来形という時制はないことについて説明します。
実は日本語にも未来形はありません。例えば、「明日高橋先生と会います」というのは未来のことを言っていますが、これが未来のことだとわかるのは「明日」というキーワードが入っているからです。明日を取り除いて「高橋先生と会います」としたら、これは予定なのか宣言しているのかよくわからなくなってしまいます。
このように日本語にも未来形というものはありません。だから英語に未来形がなくても別におかしな話ではないのです。そして英語も日本語と同じように「現在形」と「未来を表すキーワード」で未来のことを表現しています。
では「will」は何なんだ? という疑問が浮かぶと思います。文法でwillは未来形だと習うからです。そのwillについて話を進めていこうと思います。
確信度の高い思い(予測)
He will be there now.
さて、この例文はどういうことを言っているのでしょう。will があるのだから未来のことでしょうか。しかしnowという、はっきり「いま」を示す言葉もこの文章にはあります。そのためwill を未来形と考えてしまうと、この英文の意味は迷宮入りになってしまいます。
結論から述べるとwillは未来形ではなく現在形です。そしてwillの基本イメージは話し手の「確信度の高い思い」です。「きっとそうであろう」といった「思い」を述べるときに使われる単語なのです。
例文ではwillと述べられることで話し手の思いがモクモクと立ちのぼり、そのなかの話であることが明示されています。イメージで表すと次のようになります。
英文の意味は「彼はきっと今そこにいるだろう」になります。この「きっと~だろう」は、willが確信度の高い思いを表しているからこそ出てくるニュアンスです。
「確信度の高い思い」を表しているということは、「確定している事実ではない」ということも暗に含みます。つまり、この英文は「絶対とはいえないけれど、私の中では相当高い確信度で『彼はそこにいる』と思っている」ということを述べているのです。
その意味でwillは話し手の「予測」を表しているともいえます。そのためwillは何が起こるのか決まっていない未来のことを表現するときに、とても使いやすい単語なのです。
この英文では時を表すキーワードとしてnowがあるので「彼はきっと今そこにいるだろう」となりますが、これがtomorrowなら「彼はきっと明日そこにいるだろう」となります。つまり、時を表すキーワードによって「いま」のことなのか「未来」のことなのかを表しわけているのです。もちろん、時を表すキーワードがなくても、文脈から想像できることもあります。大切なのはwillは未来を表す言葉ではないということです。
さて、willが話し手の「確信度の高い思い」を表しているということを理解したうえで、もう少しwillの実践的な使い方を学びましょう。
Taro | Mom, how tall are you? |
Keiko | 160 centimeters. |
Taro | No problem. I’ll catch up with you in no time. I’m 150 centimeters now. |
Keiko | I hope you’ll grow taller than me. |
Taro | (Jokingly) It will be hard for me to reach your weight though. |
Keiko | Don’t be rude. I’ll go on a diet when I finish breast feeding. Save your breath. Get back to making curry. |
From「A Heartwarming Family」Story.6『Practice run at making curry』 |
It will be hard for me to reach your weight though.
この例文でもwillによって話し手の思いがモクモクと立ちのぼり、そのなかの話であることが明示されます。これをイメージで表すと次のようになります。
さて、この英文がどのようなニュアンスを表しているか想像してみてください。
willは話し手の思いを表すので状況によってwill のニュアンスが違ってきます。そのため話の流れをつかむことが重要になります。この例文が使われている文脈では、それまで身長の話をしていたところに太郎がからかうように体重の話をふって、「きっと体重が追いつくことは難しいだろうけれどもね」と述べているわけです。
単純な「予測」とはいいにくいwillの使い方ですが、willの基本イメージからはしっくりくる用法ではないでしょうか。日常会話ではこのようにwillが使われることをおさえておいてください。
日本語訳 | |
太郎 | お母さん、身長何センチ? |
恵子 | 160センチよ。 |
太郎 | なーんだ。それなら、すぐ追い越すよ。俺、今、150センチだもん。 |
恵子 | お母さんより大きくなってくれなきゃ困るわよ。 |
太郎 | (冷やかすように)体重はなかなか追いつけないけどね~。 |
恵子 | 失礼なこと言わないでよ。お母さんだって授乳が終わったら、ダイエットするんだからね。余計なこと言ってないで、早くカレー作ってよ。 |
「ほのぼの家族」Story.6『カレー作り予行演習』より |
確信度の高い思い(意志)
Keiko | Be back in twenty minutes, got it? |
Taro | (Reluctantly) Got it, but I’m keeping the change. |
Keiko | That’s fine. |
Taro | All right, I’ll be back in a bit. |
From「A Heartwarming Family」Story.1『Errands』 |
I’ll be back (in a bit).
このwillも確信度の高い思いを表しています。ここで学校でよくやったような「willは『きっと…だろう』だからI’ll be backは『私はきっと戻ってくるだろう』かな」と日本語訳を当てはめておしまいにしてはいけません。
日本語訳を当てはめることは楽ですが、それではwillのもっているニュアンスが抜けてしまいます。まずはwillをそのまま受け取るように努力してください。
ここでも話し手の確信度の高い思いがモクモクと立ちのぼり、そのなかで「I = back」であることが述べられています。イメージで表すと次のようになります。
これをどう解釈するかは文脈次第ですが、自分がそうしようと思っているのであれば「予測」ではなく「意志」を表していることになります。その場合は「きっと戻ってくるよ」という訳になります。
しかし、先ほど述べたように「意志」を表す場合は「きっと…する」という日本語訳を当てはめて一件落着、とはしないようにしてください。willの基本イメージは話し手の「確信度の高い思い」というだけなので予測と意志を両方含んでいるときもあります。そのような場合、どちらか片方の日本語訳をつけてしまうことで本来のニュアンスからズレてしまうことがあります。
また「確信度の高さ」に対応する日本語訳として「きっと」を自動的に入れてしまうと「意志」のニュアンスが強調され過ぎることがあります。そういうことを避けるためにもwillはwillのまま受けとめて、あとは実践のなかでどのように使われるのかを学んでいってください。
日本語訳 | |
恵子 | 20分以内に帰って来てよ。わかった? |
太郎 | (しぶしぶ)わかったよ。その代わりおつりもらうからね。 |
恵子 | いいわよ。 |
太郎 | じゃあ、行ってきます。 |
「ほのぼの家族」Story.1『おつかい』より |
【Coffee Break】
今井 「willが未来形ではない」というのは衝撃的でした。学校でwillは未来形だと習ったので、それを否定されると受け入れがたいというか、さすがに反対したい気持ちになりましたね。
遠藤 そうですね。willを未来形ということにすれば未来のことは全部willにまかせておけばよいので、とても楽になります。しかし、本文でみてきたようにwillはnowと組み合わさることもあるし、tomorrowと組み合わさることもあります。少なくとも絶対に未来のことを表すというわけではない。まずはこれを知っておいてもらいたいと思います。
今井 「明日高橋先生と会います」のように日本語にも未来形がないのだから、英語に未来形がなくてもおかしくない、というのは納得です。「tomorrow」のような未来を表すキーワードを入れることで初めて未来の話にするわけですね。
遠藤 willが未来のことを話すときに使われやすいのは、willが「事実」ではなくて「思い」を表しているからなんです。だから未来のキーワードとは相性が良くて、結果として未来のことを表しやすいんです。
will が未来を表す言葉でないことは、未来のことでも「事実」だとわかっていることにwillを使うとおかしくなることからもわかります。例えば「明日は日曜日です」と言うときに、未来のことだからといってIt will be Sunday tomorrow.としてしまうと「まず間違いなく明日は日曜日ですよ」みたいに当たり前のことを妙に力んで言っている感じになります。
この場合は It’s Sunday tomorrow. と will ではなくbe動詞の現在形を使うのが普通です。また He will be there now. も彼がいまそこにいるかどうかわかっていたらwillは使えないわけです。
【2】be going to do
It is going to rain tomorrow.
この it は漠然とした状況を表しています。is はイコールで現在形なので何かが目の前に存在しているという感覚で話しています。次の going は現在分詞で「進行・現実感」というニュアンスをgo(行く・進む)に与えています。そして to は「到達点を含む矢印」を表しており、その到達点はrain(雨が降る)となります。これらをイメージで表すと次のようになります。
例文の直訳は「明日雨が降ることに向かって状況が進行しているところだ」となります。つまり、何らかの明確な理由(例えば台風が近づいている、西のほうから前線が近づいているなど)によって明日雨が降るだろう、いまはその過程にいる。そういったことを感じさせる表現なのです。
学校ではbe going toはwillと置き換えができると習います。しかし、実際にはwillとbe going toはニュアンスが違います。willは話し手の「思い」でしたが、be going toは何かが進行している「事実」に基づいているのです。
そのため安易に置き換えることはできません。事実として何かが進行しているのか、それとも話し手の思いにすぎないのかはたいへんな違いです。
It is going to rain tomorrow. と It will rain tomorrow. は日本語訳するとそれほど変わりませんが、ニュアンスはかなり違います。例えば、前者はテレビで気象予報士が天気図を見ながら言うセリフで、後者は近所のおじさんが空を見上げながら言うセリフという感じになります。
どちらもある判断を述べる言葉ですが、ネイティブがこの2つを聞くと、その判断の基準となった前提にかなりのレベル差があることを感じとります。しかし日本語訳をゴールにしてしまうと、この違いがわからなくなります。ここでも英文そのままのニュアンスで捉えるようにすることが大切なのです。
【3】be doing
N | Taro is going camping tomorrow. Keiko goes to Taro’s room. |
Keiko | Taro, did you pack your bag for tomorrow? |
Taro | I’m doing it right now. |
From「A Heartwarming Family」Story.7『Camping Tomorrow』 |
Taro is going camping tomorrow.
Taro is goingは現在形+現在分詞(進行・現実感)が組み合わさった形であり「Taro = going」という状況を表しています。イメージで表すと次のようになります。
Taro is going campingだけだと「太郎はキャンプに行っているところです」ですが、それにtomorrow(明日)を加えると未来のことを表現していることになります。このように「現在形+現在分詞」の組み合わせで未来を表すことができますが、ネイティブはこの例文をどういう気持ちで述べているのでしょう。
Taro is going campingはまさにいまキャンプ場に向かって移動しているような状況です。つまり進行や現実感が込められています。これに未来を表すキーワードtomorrowを加えることで、時間軸をずらしているわけです。このセリフを述べる人の頭の中にはすでに明日キャンプに行っている太郎が現実感をもって描かれています。その様子が思い浮かべられるくらい確実な「予定」なのです。
ここからもわかるように英語もそんな複雑な構成になっているわけではなく、順番通りに理解すればいいだけです。現在形は「いまこの瞬間」を述べる形式だと思いがちですが、このように状況が目の前に存在している(presentしている)と感じたときに使える表現なのです。それが未来のことであろうが現時点のことであろうが構わないわけです。そういう距離感覚で英語の現在形を使ってもらえればと思います。
日本語訳 | |
N | 明日からキャンプです。恵子が太郎の部屋に入ってきました。 |
恵子 | 太郎、明日の準備、出来てるの? |
太郎 | 今、やってる。 |
「ほのぼの家族」Story.7『明日はキャンプ』より |
【4】will be doing
Taro | I’ve packed handkerchiefs and tissues, and I’ll be wearing my hat. I’m all set! I can’t wait. |
From「A Heartwarming Family」Story.7『Camping Tomorrow』 |
I’ll be wearing my hat.
例文のイメージは次のようになります。
これを will のニュアンスが分かるようにイラストにすると次のようになります。
I willはもやもやとした雲として描かれています。willは「思い」を表すので、それを使った文は主観的な表現になります。この雲のようなものは文全体が主観的な表現であることを示しています。
be wearingは話し手である太郎が帽子をかぶっている状況をありありと頭に描いており、それくらい確実なことであるというニュアンスが含まれています。つまり意志にかかわらずそういうことになっているということです。そのため客観的な表現になります。
つまり、主観を表すwillと客観を表すbe動詞+現在分詞が組み合わさった「will+be動詞+現在分詞」で、ちょうど中間のようなニュアンスになるわけです。主観的に「帽子をかぶる」という気持ちもあるし、客観的にも「実際に帽子をかぶっている」という状況でもある、そういったバランスの良い表現になっているわけです。
日本語訳 | |
太郎 | ハンカチもティッシュも入れたし、帽子はかぶって行く。よーし準備完了! 楽しみだな。 |
「ほのぼの家族」Story.7『明日はキャンプ』より |
【Coffee Break】
今井 It is going to rain tomorrow. はちゃんとした根拠があって言っているというのが面白いと思いました。It will rain tomorrow.だと本人が確実だと思っているだけということですね。
遠藤 It is going to rain tomorrow.は現在形で述べているので、「何かが進行していて(be going)、雨が降ることに向かっています(to rain)」と言えるような根拠がいるのです。だから、もうすでに何か出来事が始まっていないといけないんです。例えば天気予報だと台風がどんどん近づいているというような事実がないといけません。
そして、何かがいま進行していてその向かう先をto不定詞で表現すると、そのto不定詞が表す内容は当然未来のことになります。だから未来のことをbe going to doで表すというのはごく自然なことなのです。
このIt is going to rain tomorrow. は日本語に訳しにくい文章でもあります。本来の英文のニュアンスは「漠然としたその場の状況が進行していて、その向かう先は明日雨が降ることです」なのですが、これでは日本語に訳したとは言えませんね。
これを自然な日本語にしようと思ったら「明日は(確実に)雨が降るでしょう」としか言いようがないわけです。つまり、日本語はつかみどころのないようなもの(it)を主語にもってくると不自然さが出てしまう言語だとも言えるのです。
しかし、このような日本語訳はwillとbe going toの違いをあいまいにしてしまいます。さらに学校では日本語訳さえできればOKなので、どちらの文でも「明日は雨が降るだろう」で正解になります。これがよけいに英語そのもののニュアンスを気づきにくくさせていると思います。
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