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英語の現在形とは何なのか、イメージを交えながら代表的な用法を解説します。
現在の状態を表す
N | Keiko is folding the laundry in the living room. Taro is reading manga next to her. |
Hanako | Wah, wah. |
Keiko | Taro, can you go check on Hanako? |
Taro | What? I’m busy right now. |
Keiko | (Sarcastically) You could study instead. |
Taro | (Stands up quickly) OK, Hanako. Do you want me to change your diaper? |
From「A Heartwarming Family」Story.4『Talking on the phone with a friend』 |
I’m busy right now.
amはbe動詞なのでイコールを表しています。イメージで表すと次のようになります。
amの時制が現在形なので、話し手は目の前に「忙しい状態」が存在しているという感覚で話しています。このように目の前(いま)の状態を述べるときに現在形は使われています。
現在行っている動作の表し方
Taro is reading manga next to her.
例文をイメージで表すと「Taro = reading」となります。isの時制が現在形なので、目の前に「マンガを読んでいる状態」が存在しているという感覚です。
「まさに読む行為をしている」という動きを表すニュアンスは現在分詞(ing)にあり、「いまその状態だ」という動きがない状態を表すニュアンスは現在形(am)にあります。つまり、英語の現在形は基本的に「動きがない状態(=静的な状態)」を表現する形式であり、現在行っている行為は、現在形に現在分詞を加えることで表すのです。
この「現在形+現在分詞」を現在進行形としてセットで理解してしまうと、現在形が動きがない状態を表していることに気づかなくなってしまいます。そのため、最初はわけて理解するようにしましょう。
日本語訳 | |
N | 恵子がリビングで洗濯物をたたんでいます。その横で太郎は漫画を読んでいます。 |
花子 | オギャー、オギャー。 |
恵子 | 太郎、ちょっと花子見て来てくれない? |
太郎 | えーっ! 今、忙しいんだよ。 |
恵子 | (嫌みっぽく)別に勉強してくれてもいいのよ。 |
太郎 | (すばやく立ち上がり)さあ、花子~。お兄ちゃんがオムツ替えてあげるからな。 |
「ほのぼの家族」Story.4『電話で人と話す』より |
現在の習慣を表す
N | Naomi holds her breath as she opens the refrigerator door. She takes out a container of yogurt and opens the top. Her face looks disgusted. |
Naomi | (Disgusted) What is this smell? This yogurt is spoiled. The expiration date was three months ago! |
Yamato | (Surprised) I pretty much only use the refrigerator for drinks so I didn’t notice that. |
Naomi | What do you do for food? I imagine you buy everything at the convenience store. |
Yamato | I usually eat at the cafeteria at college. |
From「A Summer in Kyoto」Story.7『Mother comes to Kyoto』 |
What do you do for food?
whatはwhoに似た単語で、基本イメージは「モノやコトを入れるためのブラックボックス」です。whoと同じようにモノやコトを引き寄せる力をもっています。
例文のwhatは聞き手からモノやコトを引き出す働きをしています。whatに続くdoが時制を表しており、ここから現在形であることがわかります。そしてyou do for foodは「あなたが食べ物のために行うこと」となります。これらをイメージで表すと次のようになります。
文法ではwhatに続くdoを助動詞といい、youに続くdoを動詞の原形と呼んでいます。しかし、いったん簡略化のためにwhat do you doというペアが動詞部分であり現在形を表していると捉えてください。(助動詞の役割については第9章で解説します)
この英文を直訳すると「食べ物のために何をしますか?」となりますが、さてこの英文は相手に何を聞いているのでしょうか?
少し考えてみてください。
直訳を見ながら考えても正解はでてきませんね。実はこの英文は「いつも食事はどうしているの?」ということを聞いています。なぜこの表現でそのような意味になるのでしょうか。
Taro is reading manga next to her. の例文で述べたように be動詞の現在形は動きがない(静的な)状態を表しています。これは一般動詞においても同じで、現在形のdoは「変化のない常に成り立っているような行為」を表します。ここから「いつも~する」というニュアンスが出てきます。つまり、現在形は習慣化されていることを述べるのに適したスタイルなのです。
What do you do for food? はシンプルな現在形が使われているため、相手に食事に対する習慣を聞いていることになるのです。
ちなみにWhat do you do for fun? は「楽しみのために何をしますか?」で、やはり趣味や息抜きに何をしているかという習慣をたずねています。「present」は「目の前にある(存在している)」、つまり「当分はそのままの状態でいそうだ」という感覚が含まれています。必ずしもピンポイントで「いま、この瞬間」を表すだけではないのです。
現在形を使って「習慣」の他に「真理」や「法則」を表すことができるのも同じ発想からです。「目の前に存在する」「当分そのままの状態でいそうだ」という感覚があるから、真理や法則を述べるときに使って違和感がないのです。
日本語訳 | |
N | 直美、冷蔵庫のドアをおそるおそる開けます。目に付いたヨーグルトの容器を手に取り、蓋を開けたとたん、顔が引きつります。 |
直美 | (嫌そうに)ちょっと、何このにおい? このヨーグルト、腐ってるじゃない! 賞味期限、3ヶ月前よ! |
大和 | (驚いて)冷蔵庫、ほとんど飲み物にしか使わないから、気づかなかった! |
直美 | ご飯はいつもどうしてるの? どうせコンビニばかりなんでしょ? |
大和 | いつもは、学校の食堂で食べてるよ。 |
「京の都で過ごす夏」Story.7『母が京都にやってきた』より |
【Coffee Break】
今井 presentは当分先まで成り立つような日常的な習慣も含まれるということですね。これはまだ僕のなかには定着していない考え方だと思います。「What do you do for food?」を「いつも食事はどうしているの?」と解釈する感覚はなかなか出てきません。僕の場合は「食事をどうする?」になっていました。
言われてみると「What do you like?」もそうですね。いまこの瞬間に好きなことを聞いているのではなくて当面は成り立ちそうな好きなことを聞いているわけですね。
遠藤 そうですね。英語の現在形は「静的な状態」を表します。現在行っている行為(動的な状態)を表したいときは現在分詞を使って追加的に表すわけです。
例えば、今井くんが「いま東京大学に向かっています」と言いたいときに「I go to the University of Tokyo.」と言うのはおかしいわけです。それを聞いたネイティブは「私は東京大学に在籍しています」だと受け取ります。シンプルにgo という現在形で言うことによって、「習慣的な事実」というニュアンスがまず前面に出てくるのです。
今井 likeのような状態を表す動詞は現在形で使ってもニュアンスは変わらないけれど、goのような動作を表す動詞を現在形で使うとニュアンスが変わってしまうんですね。
遠藤 そうそう。だから、「いま東京大学に向かっている」と言いたいのであれば「I’m going to the University of Tokyo.」にしないといけないわけです。動作を表す動詞を普通の現在形のかたちで使ってしまうと、習慣や真理といった常に成り立っている状態を想定してしまうのです。
今井 話はわかるんですけど、やっぱり自分の中で日本語の「現在(いま)」がじゃましているんですよね。いまこの話を聞いた後でも、「What do you do?」で「いま(これから)何をしますか?」と解釈してしまいそうな気がします。
もちろん普通の会話なら、前後の文脈から「いつも何をしていますか?」と聞いてきていることがわかるので、そんなに問題はないのですが。
遠藤 現在形のニュアンスは実践で慣れていくのが普通だと思います。ただ、いまお話ししたようなことを知っておけば「ああそうだった、また出てきたな」と察しがつきやすくなります。実践で触れるだけより身につきやすくなると思いますよ。
また、こういう部分は英語を読んだときに違和感が出るところであり、大体において日本語と英語のあいだに誤差が発生しています。丸暗記するのも1つの手ではありますが、むしろそこにこそ英語をつかまえるチャンスがあると思って積極的に探求していってください。
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