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英語は主語・動詞が結論部分で、その動詞が後ろに何の単語をもってくるのかを決めています。このように英語では動詞が果たす役割が重要です。そこで、ここからは動詞に焦点を合わせて英文の組み立て方を説明していきましょう。
英語の動詞は大きく分けて2種類あります。「be動詞」と「一般動詞」です。まずbe動詞から説明していきます。
目次
【1】be動詞は「イコール」を表す
N | Taro and the old couple talk as they walk. |
Old Woman | You’re very kind to help us. We couldn’t read this map at all. |
Taro | Actually, this street is hard to find. The dental clinic is next to my friend’s house, so I know where it is. |
From「A Heartwarming Family」Story.1『Errands』 |
You are very kind to help us.
この文のareがbe動詞と呼ばれる動詞です。be動詞はもともと「存在する」が基本イメージで、日本語の「ある、いる」に当たる単語でした。しかし、時が経つにつれて「存在」のニュアンスが薄れてきて、いまでは「イコール」と同じように使われています。イメージで表すと「You = very kind」となります。
ネイティブが You are very kind. と言うとき、普通はare をごく弱く、短く発音します。are を発音しているつもりでも実際にはほとんど発音していなかったりします。聞く方も聞こえているつもりでも聞こえていなかったりします。逆にいうと聞こえていないのに聞こえているように感じていたりします。それぐらい軽い単語だと見なしているわけです。
日本語訳 | |
N | 太郎と老夫婦が歩きながら話をしています。 |
老婦人 | 本当に助かったわ。この地図じゃ、全然わからなくて困っていたのよ。 |
太郎 | ちょっとわかりにくい道なんですよ。僕もその歯医者が友達の家の隣だから、知っているだけなんです。 |
「ほのぼの家族」Story.1『おつかい』より |
【2】一般動詞は「矢印」を表す(SVO)
次に一般動詞と呼ばれる動詞の説明をします。
Keiko | (Angrily) Taro! Hurry up. Get up and have your breakfast. |
Taro | (Half-asleep) What time is it? |
Keiko | It’s 7:00. |
Taro | (Jumps up) Why didn’t you wake me up earlier? I told you I had an early morning soccer practice, didn’t I? |
Keiko | I called you many times. |
From「A Heartwarming Family」Story.2『Breakfast』 |
I called you many times.
この文のcalledが一般動詞です。一般動詞の基本イメージは「左から右へ向かう矢印」で、その矢印に動詞のニュアンスが加えられます。イメージで表すと「I → you」となります。
calledは動詞call(大声で呼ぶ)の過去形で、callという行為が過去に行われたということを表しています。つまり、「大声で呼ぶ」+「過去」というニュアンスが矢印に加わっているわけです。
なお、calledという形からわかるように、過去形は元の動詞にedをつけて派生させた単語です。
ここまでわかったら日本語訳をしたくなると思いますが、重要なことは日本語訳することではありません。この英文から情景を思い浮かべられることが重要なのです。
ただ、学習を始めたばかりの人にとっては英文から情景をつくりあげることは簡単ではないでしょう。そこで第2章で紹介した「体を使ってイメージを深める」を実践して情景をつくりあげてみたいと思います。
- 1.Iと言って、自分の胸に手をあてます。
- 2.calledと言って、手を自分の胸から離して前方に向けていきます。
- 3.youと言って、想像上の相手に手を向けます。
このように体を使うことで、紙の上にしか存在していなかった英文のイメージを現実世界に描くことができるようになります。
さて、ここまできたら日本語訳を知らなくても情景が思い浮かべられていると思います。この段階でもまだ不安があるようなら日本語訳を確認してください。自分の描いたイメージと違っていないかどうか確認するのです。
ここまで説明したことをモデル化して考えてみましょう。
例文のI called youは「Iをcalledが引っ張ってyouにあてる」という構造になっています。これをモデル化すると「○ → ○」になります。このモデルが英語のもっとも標準的な形で、文法ではSVOの文型と呼んでいます。Sは主語(subject)、Vは動詞(verb)、Oは目的語(object)です。そして、このような目的語に影響を及ぼす動詞を「他動詞」と呼んでいます。
こういう文法用語はモデル化された要素に名前をつけたものです。もちろん英会話のときに「この文はSVOの構造だから、SにIを入れて、Vにcalledを入れて、Oにyouを入れる」などと考えている暇はありません。このような解説はインプットの理解を助けるためのものであり、アウトプットではあまり役に立たないのです。
日本語訳 | |
恵子 | (怒ったように)太郎! 早く起きて朝ごはん食べなさい。 |
太郎 | (寝ぼけて)今、何時? |
恵子 | 7時よ。 |
太郎 | (飛び起き)なんで、もっと早く起こしてくれないんだよ。今日はサッカーの朝練だって言ったじゃん。 |
恵子 | 何度も起こしたわよ。 |
「ほのぼの家族」Story.2『朝食』より |
【3】矢印の宛先がない動詞(SV)
N | Taro bangs on the bathroom door. |
Taro | Dad, hurry up. I can’t hold it anymore. |
Mamoru | (Toilet flushes) Then don’t sleep in so late that you can’t hold it. |
Taro | Ugh! It stinks! What on earth did you eat? |
From「A Heartwarming Family」Story.2『Breakfast』 |
It stinks!
この例文ではstinksが一般動詞で、stink(悪臭がする)の現在形です。つまり、「悪臭がする」+「現在」というニュアンスが矢印に加わっているわけです。イメージで表すと「It →」となります。
ここでも体を使ってイメージを深めてみましょう。
- 1.Itと言って、「この場の状況」に手を向けます。
- 2.stinksと言って、手を別の方向に向けていきます。
- 3.stinksを受けるモノがないため、その手をそのまま流します。
この文では一般動詞である矢印のあて先がありません。stinksの行為を受ける言葉がないのです。このような場合はstinksの行為が他の単語に影響を及ぼさずに自己完結していると解釈します。
この文をモデル化すると「○ →」になります。文法ではこのような型の英文をSVと呼び、自己完結している動詞を「自動詞」と呼んでいます。
日本語訳 | |
N | 太郎が激しくトイレのドアをノックしています。 |
太郎 | お父さん、早く出てよ。漏れちゃうだろ。 |
守 | (トイレを流す音)漏れそうになるまで寝てるなよ。 |
太郎 | うわ! 臭! 一体、何食ってんだよ。 |
「ほのぼの家族」Story.2『朝食』より |
【4】矢印がイコール+αを表す動詞(SVC)
N | Keiko sprints after Taro. |
Keiko | (Wheezing) Taro! |
Taro | Mom, why are you here? Your face looks like a gorilla. |
Keiko | You’re the one to blame. You think I willingly went out without any make-up on? Here, you forgot this. |
From「A Heartwarming Family」Story.2『Breakfast』 |
Your face looks like a gorilla.
この例文ではlooksが一般動詞でlook(見る、見える)の現在形です。lookが「見る」と「見える」のどちらの意味になるかは文脈に依存しますが、例文では「見える」の意味で使われています。つまり、「見える」+「現在」というニュアンスが矢印に加わっているわけです。イメージで表すと「Your face → like a gorilla」となります。
ここでも体を使ってイメージを深めてみましょう。
- 1.Your faceと言って、想像上の相手の顔に手を向けます。
- 2.looksと言って、手をその顔から離して別の方向に向けていきます。
- 3.like a gorillaと言って、想像上のゴリラのようなものに手を向けます。
この文もモデル化して考えるとI called you と同じ「○ → ○」という形になります。ただしこの2つの例文は微妙に矢印の役割が違っています。I called you では矢印の影響を右の単語が受けていますが、Your face looks like a gorilla.ではYour faceが矢印によってlike a gorilla.と結び付けられています。
つまり、この例文の矢印はbe動詞の役割(イコール)と似ているわけです。正確には、be動詞のイコールに一般動詞lookのニュアンスが加わっているのです(イコール+見える)。文法ではこのような型の英文をSVCと呼んでいます。Cは補語(complement)です。
日本語訳 | |
N | 恵子は猛ダッシュで走り、太郎に追いつきます。 |
恵子 | (ゼイゼイしながら)たろー! |
太郎 | お母さん。どうしたの? そんなゴリラみたいな顔して。 |
恵子 | あんたね。誰が好き好んでノーメイクで外に出ると思ってんのよ。はい、忘れ物。 |
「ほのぼの家族」Story.2『朝食』より |
【5】人とモノのやりとりをする動詞(SVOO)
N | Mamoru and Taro come home. |
Taro | We’re home. We bought toilet paper. |
Keiko | Thank you. |
Taro | We also bought you a present. It’s your favorite, an eclair. |
Keiko | Oh, how nice! It just so happens that I wanted to eat something sweet. |
From「A Heartwarming Family」Story.8『Driving』 |
We (also) bought you a present.
この例文ではboughtが一般動詞で、buy(買う)の過去形です。つまり、「買う」+「過去」というニュアンスが矢印に加わっています。そして、今回はその矢印の右側に単語が2つ、youとa presentが並んでいるのが、これまでの例文と異なっています。イメージで表すと「We → you + a present」となります。
ここでも体を使ってイメージを深めてみましょう。
- 1.Weと言って、想像上の私たちに手をあてます。
- 2.boughtと言って、手を私たちから離して前方に向けていきます。
- 3.youと言って、想像上の相手に手を向けます。
- 4.相手に手を向けたまま a present と言って、手品のように手のひらの上にプレゼントを出現させます。
このbuyのように右側に単語が2つ並ぶ動詞にはgiveやtakeなどがあります。これらの動詞は「動詞+人+モノ」の順序で「人とモノのやりとりをする」ことを表します。この「人+モノ」という順序は、まず人に手を向けて、次にその手のひらの上にモノを出現させると考えると理解しやすいでしょう。
この文をモデル化して考えると「○ → ○ + ○」になります。文法ではこのような型の英文をSVOOと呼んでいます。
この型の英文は動詞の次に目的語が2つ並ぶので慣れるまでに少し時間がかかるかもしれません。この型の英文に出会ったら何度もリピーティングや音読をして、しっかり自分のものにして下さい。
さて、一般動詞の英文の組み立て方を説明してきましたが、文法にはSVOCという型もあります。それについては第9章で述べたいと思います。
日本語訳 | |
N | 太郎と守が家に帰って来ます。 |
太郎 | ただいま。トイレットペーパー買ってきたよ。 |
恵子 | ありがとう。 |
太郎 | これ、おみやげ。お母さんの好きなエクレアだよ。 |
恵子 | わー嬉しい、ちょうど甘いものが食べたかったのよ。 |
「ほのぼの家族」Story.8『ドライブ』より |
【Coffee Break】
今井 うーん。僕はこの自動詞や他動詞って大嫌いなんです。
遠藤 なぜですか?
今井 学校でいろいろと暗記させられるじゃないですか、自動詞と間違えやすい他動詞一覧とか、他動詞と間違えやすい自動詞一覧とか。
遠藤 例えば「discussは他動詞だから目的語をすぐ後ろにもってこないといけない」とか、「arriveは自動詞だから前置詞が必要で、前置詞はatを使う」とかいうやつですね。
今井 そういうのって僕には役に立ちませんでしたね。そもそも何でそうなるのかが全くわからない。いきなりドンと上から降ってくるし、現実と切り離されてしまっているから手がかりがない。動詞の活用表みたいな感じで、僕のなかでそれに対する感覚が死んでしまうんです。
だから僕は英会話を学ばないといけなくなってからも、自動詞と他動詞の区別は意図的に無視してきました。それでも十分ネイティブと会話ができているから、そんなの知らなくてもいいんじゃないかと思っているんです。
遠藤 なるほど。1つの動詞が自動詞として使われることもあれば、他動詞として使われることもあるので、表で覚えようとするとシンドいですね。そもそも動詞が後ろの単語に影響を及ぼしている場合は他動詞といい、自己完結している場合は自動詞といっているだけですから。
動詞の使い方というのは実際の英文から学んだほうがいいと思います。それも自動詞として使われているのか他動詞として使われているのかといった文法的な視点で見るのではなく、「この動詞はたいてい後ろの単語に直接影響を及ぼしがちだな」とか「この動詞は前置詞のwithとよくペアで使われているなあ」といった感じで経験的に学んでいくべきなんです。
今井 僕は英文法って何となく筋トレのようなものだなと思っているんです。野球選手にとっても筋トレは重要ですが、筋トレさえしていればすごい野球選手になれるわけではありませんよね。
遠藤 もしそうだったらボディビルダーはみんな野球が上手いことになってしまいますね(笑)あんなに筋肉をつけてしまうと、逆に野球はやりにくいと思います。同じように、実は英文法をやりすぎたら英会話はやりにくくなると思います。それに英文法の本を読むのに時間がかかりすぎて、会話の練習に回す時間や気力がなくなってしまうのでは本末転倒ですよね。
今井 英文法に時間をかけすぎないっていいですね(笑)
遠藤 ゲームを始めるのにゲームの攻略本を隅から隅まで読む必要はないのと同じことだと思います。攻略本も文法書も必要に応じて読めばいいのです。
今井 学校で習うような英文法が全部分かってないと話せないんじゃないかって心配する人っているじゃないですか。でも、そんなことを心配している暇があったら、少しでも会話の練習をしたほうがいいですよね。文法が全部わかったとしても、その時点ではやはり話せないわけですから。練習や実践から逃げたらいけないんだと思いますね。
遠藤 英会話を習得していくには自分のなかに英文を蓄積していかなければいけません。そのために英文法を道具として使うわけですが、道具はあくまで道具であって、力を入れるポイントはそこではありませんね。
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