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可算名詞や不可算名詞の違いから、それぞれの名詞の起源(成り立ち)について解説しました。
“fish” or “a fish” ?
次の7つのイラストを見て、それぞれの場合にネイティブはfish と言うか a fishと言うかを考えてみましょう。「意外!」と思うものもあるかもしれませんよ。
答えは最後に掲載しています。
【Coffee Break】
今井 学校で可算名詞や不可算名詞という言葉を聞いた覚えがあるのですが、fishでいえば「泳いでいる姿のままの魚」や「魚料理」はどういう扱いになるんですか?
遠藤 「泳いでいる姿のままの魚」が可算名詞の場合の意味に分類されて、「魚料理」は不可算名詞の場合の意味に分類されますね。
今井 ここで僕はわからなくなるんです。だって、「魚料理」って数えられるじゃないですか。なんで「魚料理」は数えられない名詞なんですか?
遠藤 それは多くの日本人が一度は思ったことがある疑問だと思います。まずは、みなさんが可算・不可算という表現に出会う辞書で、fishがどのように書かれているのかを見てみましょう。
fish | 【可算】(泳いでいる姿のままの)魚 |
【不可算】魚肉、魚料理 |
これを見たら大半の人は「なぜ魚肉や魚料理は数えられないのか?」と今井くんと同じ疑問を感じるはずです。本来は次のように書くべきなのです。
a fish | 泳いでいる姿のままの魚(輪郭+中身) |
fish | 魚の中身、魚肉、(慣例的に)魚料理 |
「可算」は a fish に対応し、「不可算」は fish(単体)に対応しています。
さきほどの疑問がでてくるのは、私たちが「魚料理」という日本語について考えていることが原因です。辞書にはfish(単体)で用いられるときが「魚料理」だと記載しているのに、私たちは日本語の「魚料理」が数えられるとか数えられないとか言っているわけです。
しかし、これはまったく意味のないことです。日本語の世界では「魚料理」は1品、2品と数えられるものですが、そのことと fish(単体)の意味が「魚料理」になることは無関係なのです。
今井 なるほど。確かにいま僕が悩んでいたのは日本語の「魚料理」が数えられるかどうかでしたね。これは気がつきませんでした…。
遠藤 これもa glass of waterと同じく日本語を介したために、日本語に引きずられてしまっている例です。そのため、この場合もポイントは現実(リアルなシーン)を思い描くことにあります。
では現実の「魚料理」を見て、どのように考えれば fish(単体) という表現と結びつけることができるのかを考えてみましょう。
ネイティブは「魚料理」を見たときに、「魚(a fish)の中身」だから「fish」だと表現します。たとえ魚料理が何品もあったとしても、彼らにとってはあくまでも「魚(a fish)の中身」でしかありません。
このようにネイティブがfish(単体)という言葉を使うときには、その前提としてa fishが何を表しているのかが脳裏をかすめています。a fishが「泳いでいる姿のままの魚」であることがわかっていなければ「魚料理」を見たときにfish(魚の中身)と述べることはできないのです。
私たちのように第二言語として英語を学ぶ者にとって難しいのは、このような前提がわかりにくいことです。つまり、その名詞が現実の「何」から生まれたのかが把握できていないわけです。
いまfishという名詞を挙げましたが、この名詞は現実に泳いでいる魚をa fishと名付けたことがすべてのはじまりになっています。そこからfish(単体)の意味「魚肉、魚料理」が同時に生まれたわけです。
しかし、私たちがa fishよりも先にfishに出会ってしまったら、fishの意味が何から生まれたのか想像しようがありません。そのため「なぜfishで『魚料理』という意味になるのだろうか? 魚料理の意味で使われるfishはなぜaをつけないのだろうか?」という疑問を覚えるのも当然なのです。つまり、その名詞の起源がわからないと名詞単体が表す意味がつかめないわけです。
さきほど本来あるべき辞書の書き方としてa fishをさきに述べているのは、名詞の起源をまず示すことが大切だからです。fishが示すように名詞の起源はたいてい実際に目に見えるものなので、輪郭をもっている場合が多いです。その起源をおさえたうえで輪郭をもたない名詞単体(名詞そのもの)の意味を調べるという順序で学ぶべきなのです。
輪郭と中身を正確に捉えることが名詞を理解することにつながります。この意味で輪郭をもつ場合(=可算)と輪郭をもたない場合(=不可算)の意味を行き来しやすい辞書はおおいに活用したいものです。
今井 辞書ってそういう使い方ができるんですね。辞書というとたくさんの意味が羅列されているものとしか思っていませんでしたが、数えられる場合の意味と数えられない場合の意味を自分のなかで順番をつけて結びつけていくとおもしろそうな気がします。
“fish” or “a fish” ? の答え
1 a fish
2 a fish
3 fish
4 fish
5 fish
6 fish
7 a fish
ネイティブも実際に外枠(輪郭)があったとしても、それを無視して中身だけを見ることがあります。6と7はまったく同じ状態の魚ですが、そのようなネイティブのモノの見方を反映しています。
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