§10-3 枠のない表現

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※本記事は書籍『英会話イメージリンク習得法』の一部をWeb公開したものです。

前々節で冠詞とは外枠や輪郭を表していることを述べ、前節では具体的にone, a/an, theを取り上げて冠詞の働きを確認しました。

ここまで外枠や輪郭があるパターンを確認してきましたが、ここではそのような枠のない表現を取り上げます。

※英語において無冠詞で用いられる名詞は、ある意味「名詞そのもの」を表していると言えます。つまり、名詞そのものについて解説するということになります。

【1】枠に入れない場合(単数形)

I ate fish last night.

この例文でfishは「魚の中身」、つまり「魚肉、魚料理」を表しています。しかしfishはそういう具体的なモノ以外も表すことができます。

Which type of fish would you recommend?

この例文は「どの種類の魚がオススメですか?」という意味です。この場合のfishは「魚肉、魚料理」ではなく具体的な姿を想像させない(=具現化されていない)「記号としての魚」を表しています。

I did not know that there are seasons for fish, too.

この例文は「魚にも季節がある(=魚にも旬がある)とは知りませんでした」という意味です。この場合のfishも具体的な魚のことではなく「記号としての魚」を表しています。

【2】枠に入れることができない名詞

Could you bring me a glass of water?

waterはa/anやoneといった輪郭の中に直接入れることができません。その理由はwaterがどこまでも広がってしまうような連続体だからなのですが、このことを説明しましょう。

Could you bring me a water?

これは少しおかしい英文ですが、このようにa waterと表現するとネイティブがどう感じるかを再現してみましょう。

まずaでどこにでもあるような輪郭であることを宣言し、そこにwaterという中身を入れようとしています。しかし、上手くその輪郭に収まってくれません。waterはどこまでも広がってしまうような連続体なのでaの輪郭の外に出ていってしまうのです。だからおかしいということになるわけです。

しかし一方で正しい使われ方のa glass of water は、私たち日本人の口からはスムーズに出てきません。なぜこの表現がスムーズに出てこないのでしょうか。

日本語訳は「お水を頂けますか?」です。レストランなどでよく使うセリフですね。もちろんこのセリフは、水という流動体がそのまま欲しいという意味ではなく、グラス1杯のお水が欲しいわけです。

しかし、日本語では「グラス1杯のお水を頂けますか?」とは言いません。外枠の部分、この場合は「グラス」を無視して、中身の「お水」だけを表現します。このような日本語の特徴がa glass of waterという英語の言い回しをスムーズに話せなくしていたのです。

それではどうすればa glass of waterがスムーズに出てくるようになるのでしょうか。ポイントは現実(リアルなシーン)を思い描くことです。目の前に「グラスに入った水」を思い浮かべて、それを外枠から中身という英語のモノを見る順で表現するのです。

「グラスに入った水」のいちばん外枠は「グラス」です。ここでは別に特別なグラスが欲しいわけではありません。そういう気持ちを反映して普通の外枠であるaを述べて、そのaに入れる中身としてglassを続けます。これで「(普通の輪郭をもった)グラス」が表現されます。その上でそのグラスと水を結びつけてof waterと述べるわけです。

このように現実をイメージしてそれを英語のモノを見る順で表現するのは、言い換えると日本語の介入をなるべく排除するということでもあります。もし日本語訳から英文をつくろうとしたら、日本語訳に「グラス」がないので、英語でも「a glass」が抜けやすくなります。

日本語訳を経由させると日本語と英語のズレているところで間違いが出てきます。なるべく日本語を排除して目に見えるリアルなシーンから英文を考えるようにすることが大切なのです。

また「お水をください」はいつもa glass of waterとは限りません。a bottle of waterと言うときもあるでしょう。フレーズの丸覚えではなく現実の場面から water の輪郭をきめるようにしましょう。

ただし実際には完全に日本語を排除することはできませんし、リアルなイメージをつくりあげることも簡単ではありません。だから日本語に頼りながらも、間違いに出会ったときは丁寧にイメージをつくりあげて理解していく、というのが現実的なやり方になると思います。

イメージをつくりあげる方法は頭で考えるだけではなく、実際に体を動かしたり、「グラスに入った水」などを準備したりしてみるとよいでしょう。そうするだけで日本語では見えなかったものが見えるようになってくることがあります。手間はかかりますが、そのようにひとつひとつおさえていきましょう。

【3】枠に入れない場合(複数形)

I really like dogs.

最後に複数形の場合を確認しておきます。複数形のdogsは、はっきりした輪郭をもっていません。これは境界線がなく集合として「どこまでも広がっていく」という意味でもあります。

そのため、この例文は「私は本当に犬が大好きなんです(どんな犬であろうが、犬だったらすべて大好き)」という意味になります。このように複数形のdogsはdog 全体を表す働きをします。

見方を変えると、このdogsも1つの名詞になります。名詞は基本的に「中身」を表しているので、dogsもdogと同様に「中身」しか表していないと見ることができます。そのため境界線を明示したい場合は外枠を設ける必要があるのです。

例えば「three dogs」といったように最初に3つの輪郭をもってきて、その中にdogsを入れることで具体的な「3匹の犬」という輪郭を型取るわけです。

このような外枠や輪郭を設定しなければ無制限に広がっていくのが複数形なのです。

さてwater単体とdogs単体の説明で「どこまでも広がっていく」ということを述べました。waterはそのままで、dogsは複数形にすることによって、どこまでも広がっていけるわけですが、簡単にその理由を説明しておきましょう。

まずwaterはその言葉のなかに境界線の情報をもっていないのでwater単体でそのままどこまでも広がっていくことになります。一方dogはその言葉のなかに犬のシルエット(境界線)という情報をもっています。そのため単数形のdog単体は「どこまでも広がっていく」ものではありません。しかしこれを複数形のdogsにすると今度は集合としてどこまでも広がっていくことができます。

つまり、境界線をもたないモノはそのままで、境界線をもつモノは複数形にすることで、どこまでも広がっていくことができるのです。

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§10-4 「先に結論、後で説明」と「外枠から中身へ」
英文全体を貫く「先に結論、後で説明」という方針と、モノをひとつずつ表現するときの「外枠から中身へ」という方針を組み合わせた英語の構造を確認します。