§10-1 モノの表現方法

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※本記事は書籍『英会話イメージリンク習得法』の一部をWeb公開したものです。

日本語に存在しない冠詞を題材に、英語ではモノをどのように見ているのか、またそこから冠詞とは何者なのかを解説していきます。

【1】冠詞の有無による違い

冠詞は何を表しているのでしょうか。それを知るためにいくつかの例を挙げて考えてみましょう。

fish 対 a fish

(1)I ate a fish last night.

(2)I ate fish last night.

例文(1)(2)は冠詞aがあるのかないのかというだけの違いです。そしてどちらの文章も「昨晩、魚を食べた」と訳せます。しかし、その「魚」が表しているモノは全然違っているのです。

まず例文(1)では「水中で泳いでいる姿のままの魚」を表しています。ピチピチ跳ねているような魚をそのまま食べたという意味です。

次に例文(2)では「魚料理」を表しています。魚は切り身になっていてもすり身になっていてもかまいません。それを焼いたり煮たりしたものを食べたという意味になります。

このようにまったく情景が違います。なぜここまで違ってしまうのでしょうか。それではイメージで捉えてみましょう。

a fishには「輪郭のある魚」が描かれています。一方、fishには「輪郭のない魚」が描かれています。「輪郭のない魚」は「魚肉」を表しています。魚肉を食べたということは、つまり魚料理を食べたということです。

room 対 a room

(3)a room

(4)room

a roomは「部屋」を意味しており、roomは「空間、スペース」を意味しています。aのあるなしで、なぜこのように違ってしまうのか考えてみましょう。

a roomが「部屋」という意味であることはご存じでしょう。そしてイメージにあるように「部屋」は「枠に囲まれている空間」ということでもあります。

そうするとroomは「枠に囲まれていない部屋」となります。つまり部屋から枠を取り除いたあとに残っているものなので、roomは「空間、スペース」という意味になるわけです。

work 対 a work

(5)work

(6)a work

workは「作業」を表しています。一方でa workは「作品」を表しています。これについても、なぜこのように意味が違ってしまうのか考えてみて下さい。

それではこれもイメージで捉えてみましょう。

workは何かをつくる作業が描かれており、a workはその作業の結果できた輪郭のあるモノが描かれています。輪郭があるということは、触って手に取ることができるということなので「作品」になるわけです。

いま3つの例(fish対a fish、room対a room、work対a work)を挙げました。これら全てに共通しているのは、冠詞aは外枠や輪郭を表しているということです。そして名詞(fish、room、work)は中身を表していたわけです。

【2】英語は外枠から中身への順序

英語はモノを表すときに外枠(輪郭)と中身をわけて表現します。そして、そのモノに外枠がある場合は外枠から中身という順に述べていくのです。さきほどの例文で確認してみましょう。

I ate a fish last night.

体を使ってイメージを深めてみましょう。

  • 1.Iと言って、自分の胸に手をあてます。
  • 2.ateと言って、手を自分の胸から離して前方に向けていきます。
  • 3.aと言って、手でくるっと球をつくります。手で触れる輪郭をかたどります。
  • 4.fishと言って、球の中に中身(要素)を出現させます。

ポイントはaと言ったときに、手でくるっと球をつくるような動作をして輪郭をかたどってから、fishでその球のなかに魚の中身(要素)を出現させることです。この手順によってa fishという言葉が、聞き手の頭の中で「水中で泳いでいる姿のままの魚」という輪郭をともなった絵につながります。

これで全体を通すと日本語訳としては「私は昨晩、(ピチピチ跳ねているような)魚を食べた」となるわけです。

I ate fish last night.

この例文も体を使ってイメージを深めてみましょう。

  • 1.Iと言って、自分の胸に手をあてます。
  • 2.ateと言って、手を自分の胸から離して前方に向けていきます。
  • 3.fishと言って、手を魚の中身に向けます。

ポイントはaがないのでいきなりfishと述べて魚の中身を出現させていることです。聞き手はfishだけを聞くことになるので、それだけで「魚肉」という絵になります。これで日本語訳としては「私は昨晩、魚肉(魚料理)を食べた」となるわけです。

このように英語では何かモノを見たとき、中身が何なのかを述べる前に外枠や輪郭を述べます。外枠や輪郭をかたどった上で中身を表現するのが英語の表現順序なのです。

一方、私たち日本人はモノの外枠や輪郭をそれほど強く意識していません。言語的にもいちいちそれを表現する習慣はありません。それは2つの例文の日本語訳を見てもわかります。どちらも「昨晩、魚を食べた」といっているだけです。

日本人は「魚」という言葉を「魚肉(中身)」の意味でも、「水中で泳いでいる姿のままの魚(輪郭+中身)」の意味でも使います。これはモノの輪郭を無視しているからこそ可能なことなのです。

外枠や輪郭を意識しないことは、単数と複数を区別しないことにもつながります。例文で確認してみましょう。

(7)I went to Tokyo to see a friend.

「私は友だちに会いに東京に行きました」

(8)I went to Tokyo to see some friends.

「私は友だちに会いに東京に行きました」

(9)I went to Tokyo to see three friends.

「私は3人の友だちに会いに東京に行きました」

まず英語のほうを確認すると、それぞれa friend(単数)、some friends(複数)、three friends(複数)と外枠や輪郭が別の表現になっています。なお、someは「ぼんやりとした」が基本イメージの外枠です。some friendsで「ぼんやりとした数の友だち」となり「何人かの友だち」(複数)という意味になります。

次に日本語のほうを確認すると、それぞれ「友だち」(単数)、「友だち」(複数)、「3人の友だち」(複数)となっています。英語との対応状況を次の挿絵で確認してみましょう。

日本語が外枠や輪郭を意識していないのはa friendもsome friendsも「友だち」と表現していることからわかります。友だち一人ひとりの輪郭を意識しているのであれば単数と複数で表現を変えるはずだからです。これは見方を変えると、日本語では基本的に境界をもうけないため「友だち」(中身)をどこまでも広げていくことができる、とも言えるでしょう。

ただし、例文(9)では「3人の友だち」という表現になっているので、日本語も具体的な数を表現したいときは数を明示することがわかります。しかし「3人の友だち」は「友だち3人」と表現することもできるので、日本語は英語のように枠や輪郭を設けてから中身をいれているわけではない、ということに注意が必要です。

以上から、日本語では基本的に「外枠や輪郭を意識せず中身だけを見る」ということが言えます。日本人は外枠や輪郭に対する意識が言語的に習慣づけられていないのです。

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§10-2 枠のある表現
英語の代表的な冠詞・数詞である「one」と「a」と「the」の3つを取り上げて、それらの違いを基本イメージを元に解説していきます。