第4節 英語における時制感覚

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ここまで時制について学んできました。英語にはpresentとpastの2つの時制しかないことをご理解いただけたと思います。会話ではこの2つの時制を使い分けて話を進めるのですが、ネイティブは私たちにとって違和感のある時制の使い方をすることがあります。その1つである英語の時制感覚について説明します。

【1】英語と日本語で時制がズレる理由(時制の一致)

N Taro flings the door open and goes inside the house.
Taro I’m home. I made plans with Shinichi, so I’m going out.
Keiko Where are you going?
Taro To Shinichi’s house.
Keiko You should at least wash your hands and gargle when you get home from school.
Taro But I told him I would go to his house right away.
From「A Heartwarming Family」Story.3『Going to a friend’s house』

I told him I would go to his house right away.

前半のI told himは「私は彼に話した」で、後半のI would go to his house right awayは「すぐに彼の家に行くつもりだった」です。

前半は省略されているthatによって後半につながっています。自然な日本語に訳すと「すぐ家に行くって彼に言った」となります。

英文は前半も後半も過去形ですが、日本語訳は語順が入れ替わったうえで片方だけ現在形になっています。

I told him I would go to his house right away.

すぐ家に行く(つもりです)って彼に言った

つまり、英文と日本語訳で時制がズレてしまっているのです。なぜこのようなことが発生したのでしょうか? その理由を考えるために英文と日本語訳のイメージを確認してみましょう。

まず日本語訳のイメージを先に説明します。「すぐ家に行くつもりです」の部分では太郎が信一を目の前にして、いままさに話している感覚で述べています

そして、「って彼に言った」の部分では太郎は恵子を目の前にして、さきほどの「すぐ家に行くつもりです」という内容を過去のものとして眺める感覚で述べています。

つまり、日本語では話している内容に応じて、話し手が立ち位置を変えているわけです。話し手が話の内容のその場その場に入り込んで、そこで話したことをそのまま再現するので、過去の話であっても「すぐ家に行くつもりです」のような現在形が混入してきます。

次に英文のイメージを説明します。I told himで太郎が話すという動作をしたのは過去のことです。そしてI would go to his house right awayで太郎自身が話した内容もそのまま過去のものとして述べています。

つまり、英語では話し手は常にpresent(現在)から物事を眺めていることがわかります。立ち位置が動かないのでtold、wouldと過去形で述べます。このように話し手の立ち位置が異なっているので、会話で時制がまたがるときに英文と日本語訳の間でズレが発生していたのです。

このようなズレを文法では「時制の一致」というルールで説明しています。

そのルールとは「主節の動詞の時制に従属節の動詞の時制を合わせる」というものです。主節(I told him)で過去形が使われているから従属節(I would go to his house right away)も過去形にしないといけないというルールです。

しかし、これは特別なルールというわけではありません。英語では話し手が立ち位置をpresentから動かさないので時制が連続しているだけなのです。

日本語訳
太郎が乱暴にドアを開けて家に入ってきました。
太郎 ただいま~。信一と遊ぶ約束したから、行ってくるね。
恵子 どこによ。
太郎 信一の家。
恵子 学校から帰って来たら、手洗いうがいぐらいしなさい。
太郎 すぐ行くって信一に言っちゃったんだもん。
「ほのぼの家族」Story.3『友達の家に遊びに行く』より

【2】英語の時制は話し手の遠近感を反映する

「時制の一致」という文法ルールも絶対ではありません。主節と従属節という関係でも時制を一致させない例外があります。

Mamoru If you can’t even get spiked shoes, a car is probably out of the question. If I mention that I want a new car, she’ll probably yell at me saying, “Our car is still running! There is no money for a new car.”
Taro Speaking of which, she said you will drive this car until it spits fire.
Mamoru That’s crazy.
From「A Heartwarming Family」Story.8『Driving』

She said you will drive this car until it spits fire.

これは主節(She said)で過去形(said)になっているにもかかわらず、従属節(you will drive this car…)では現在形(will)が使われています。saidは「彼女が言った」というpastのことを表し、willは「この車が火を噴くまであなたはこの車をきっと運転するだろう」というpresentのことを表しています。

つまり、これを述べている話し手にとっては「この車が火を噴くまであなたがこの車を運転するだろう」ということが目の前に存在しており、当分成り立ちそうなことであると見ているわけなのです。

このように英語における時制とは、話し手がものごとを見るときにどのように認識しているのか、presentから見てそれが近いものなのか、遠いものなのかということを反映しているだけなのです。

この文章はShe said you would drive this car…と時制を一致させても訳したときの意味はそれほど変わりません。ただ will と現在形にすることでより思いの強さ、生々しさが強調されるのです。

日本語訳
スパイクでその調子じゃ、車は無理だな。『新しい車がほしい』なんて言ったら、『まだまだ乗れるでしょ!どこにそんなお金があるのよ』って激怒するに決まってるもんな。
太郎 そう言えば、この車が火を噴くまで乗るって言ってたよ。
めちゃくちゃだな。
「ほのぼの家族」Story.8『ドライブ』より

▶次の章はこちら

第9章 英語の原始的構造
第8章の最後に英語における時制感覚を説明しました。そのときに「時制の一致」というルールを取り上げましたが、ルールを覚えるのではなく、そもそも...
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